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やまんばは、怖い、恐ろしい ?
この絵本のやまんばは、怖くはありませんでした。
・・・
秋、
月のいい晩
空がにわかに曇ってきて風が吹き出す。
叫び声が聞こえる。
ちょうふくやまの やまんばが こども うんだで、もち ついてこう。
ついてこねば、人も うまも みな くいころすどお。
村人たちは、餅をついて、やまんばに持っていくことにした。
(恐ろしいやまんば!)
餅を持っていく役目は、だだはちとねぎそべと言う暴れん坊。
道案内の あかざばんば(ばあさま)も 行くことになった。
しかし、ふたりは 怖くなり逃げだした。
あかざばんばは、ひとり 山に上って行った。
・・・
「ごめんくだされ。もち もってきたす。」
「よう きた、よう きた。」
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きのう、「餅を持ってこい」と村人を脅かしたのは、
生まれたばかりの
がら 。
「やまんばの 子だもの。うまれれば すぐ とんで あるくだ」
(なるほど)
やまんばは、
熊のすまし汁で ばばをもてなし、
「二十一にちほど てつだってくれや」と言ったと。
・ ・・
二十一日がたって、やまんばは、ばばに言った。
「やっかい かけたな …… にしきを もっていけ」
「なんぼ つかっても つぎの日は また もとどおりに
なっている ふしぎな にしきだ」
「かぜひとつ ひかねえように、まめで くらすように、
おらの ほうで きをつけてるでねえ」
・ ・・
ばばは、がらの背中にしがみつき、村へひとっ飛び。
ばばは、村人たちに錦を分け、村人たちは、錦をふくろや半纏にした。でも、次の日には、やまんばの言う通り、錦は元通りになった。それからというもの、村の人たちは、風邪もひかず、楽に暮らしたということだ。
めでたし めでたし。
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怖くないやまんばでした。でも、それは読んだあとでわかったことです。読んでいる途中は、やはりハラハラドキドキの体験をします。
「大工とおにろく」という昔話があります。村人に頼まれ大工は橋を架けようとしますが、なかなかできません。 鬼が現れて、大工の目玉とひきかえなら、橋をかけてやるといいます。この鬼は人の手には負えない日本の急流を象徴しているように思います。
「にしき」を村人に与える、この『やまんばのにしき』は、「あかざばば」の勇気と行動に応えた「母なる自然のすがたとその恵み」を形象しているように思います。自然は、厳しく災いをもたす一方で、恵みと美しさをあたえます。
・・・
※『やまんばのにしき』松谷みよ子作、瀬川康男絵、ポプラ社 1967年
【 追 記 】
絵本には「うしかたとやまんば」という、もうひとつの民話も載せられています。 (2023/3/25)