隠し絵をつかった、ファンタジーの絵本です。
公園で おにいちゃんと 遊んだ 帰り道。
けいこが 生垣を くぐると
そこは、
見たこともない 森の入り口でした。
なかみち ほそみち もりのみち
こわいかな こわくない
だあれも いない もりのみち
こわいかな こわくない
心細くなった けいこは 大声で うたいました。
すると、
とつぜん、声がして
木の枝みたいな おとこのこが あらわれました。
「おいらの なまえは もりの かくれんぼう」
「あ、あたし たかはし けいこ」
「もりの なかまたちと、かくれんぼ しないかい」
「わあ、あたし、かくれんぼ、だいすき」
どうぶつたちが あつまってきました。
けいこが おにです。
みんな、どこに かくれているのでしょう
(ここが隠し絵になっています)
くまさん
きつねさん
りすさん
いたちさん
とかげさん
たぬきさん
しかさん
ふくろうさん
もぐらさん
さるさんを
見つけました。
でも、かくれんぼうが 見つかりません。
「あっ、あんな ところに いたっ」
こんどは くまさんが おにです。
けいこと かくれんぼうは 繁みの中に もぐりこみました。
かくれんぼうの 手を にぎりながら、
いつまでも じっと していました・・・
のろまな けいこは どこ いった
なきむし けむしの けいこは どこだ
「へんな うた」と、
けいこが 顔を あげると、
そこにいたのは おにいちゃんです。
見えるのは けいこの 団地の たてものばかりです。
でも、けいこは
また、かくれんぼうに 会える気がして なりませんでした。
・・・
隠し絵をたくみに使ったファンタジーです。
森のどうぶつたちのかくんぼに 隠し絵が使われています。読者は、隠れているどうぶつたちを見つける楽しみがあります。でも、「かくれんぼう」は、なかなか見つかりません。絵の中を探してみてください。見つけるのは たいへんです。
林明子さんの絵は、人物の表情がとても生きいきしています。けいこの気持ちを、絵から読みとることができます。ファンタジーを成り立たせる条件のひとつに、主人公のけいこがいます。ファンタジーを素直に受け入れる年ごろの人物です。そして読者も。
おはなしの中にある歌も、読者の興味をひろげる仕掛けです。また、どうぶつたちとかくれんぼをしたところは、団地ができる前は、大きな森でした。
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※『もりのかくれんぼう』 末吉曉子作、林明子絵、偕成社 1978年 (2024/8/30)