ふるはしかずおの絵本ブログ3

『もし、世界にわたしがいなかったら』- 「わたし」とはだれか?

「わたし」とは、いったいだれでしょうか?

なぞなぞのようです。謎が深まる展開です。

    

   

わたしは、ずいぶん長く 生きてきた。

あなたが知っている だれよりも 前から

    

  

 わたしは どこにも いる

  

       

あなたは 赤ん坊のときは、わたしのことを しらなかった

年をとると、わたしを わすれはじめる

   

 

 わたしから はなれようとする 人も いるけど

 わたしを 頭のなかから おいだすことは できない

   

   

愛を つたえることも あれば

傷つけることも ある

 

     

最初、わたしは ひとりだった

でも、いまは、いろんな形に、いろんな姿に なっている

若い わたしも いれば、老いた わたしも いる

またたく間に 消えていく わたしも いる

   

  

 ひとりの わたしが 消えると、

 ひとつの 文化が 消える。

      

   

わたしを ひとりしか しらない人も

ふたり 知っているも

もっと 知っている人も いる

いろんな わたしを 知っていると、

いろんな世界を 見ることが できる

   

   

わたしは あなたを、つれていって あげられる

過去へ、現在へ、未来へ

    

 わたしが、いるから、人が 人に なる

     

    

 わたしは、言葉

   

        ・・・

言葉とは何か、言葉の役割について、なぞなぞのような形で、やさしく解きあかしています。全部は紹介していませんが、詩のような文章です。「わたし」が語り手ですので、読者は、「わたし」から呼びかけられるような感じです。そして、「わたし」(言葉)について考えるように導かれます。

    

「いま世界で使われている7,000以上の言語のうち少なくとも半分は、2100年までになくなると考えられています。ひとつの言語が滅びると、文化もいっしょに滅びてしまいます」(作者のことば「読者のみなさんへ」)

       

「わたし(言葉)が、いるから、人が 人に なる」



        ・・・

※『もし、世界にわたしがいなかったら』 ビクター D.O.サントス文、アンナ・フォルラティ絵、金原瑞人訳 西村書店 2024年

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