畑から ほりだされた、みどりいろの おおきな 釣鐘。
さいごは
たくさんの ちいさな鈴に なりました。
・・・
むかし むかし
畑を たがしていた イワンが、
青銅でできた つりがねを 見つけました。
村人たちは、
「神様の おめぐみ」と考え、
つりがねを さげる 櫓を たてました。
うつくしい 音色が 響きました。
ある日
皇帝が、
「そのかねは わたしのものだ」と言い、
兵士たちの 先頭に立って、村へ 向かいました。
つりがねは
樫の木の 荷車に のせられ、
6とうの 馬が 引きました。
でも、びくとも しません。
12とうの 牛でも 運べません。
すべての兵士に 全力でひっぱるように 命じましたが、
土に根を おろしたように うごきません。
皇帝は、
つりがねを こなごなに 砕くように 命じました。
幾千もの かけらが 畑を おおいました。
イワンは、
つりがねの かけらを
土に もどして あげようとします。
ひとつ残らず 集めようとすると・・・
なんということでしょう。
畑は ちいさな鈴で おおわれている ではありませんか。
イワンは、
鈴を あつめ、
村の 人たちに、
隣りの村の 人たちに 手わたしました。
みんな じぶんの たいせつな馬を 鈴でかざりました。
鈴の音は 雪の大地に ひびきわたりました。
・・・
傲慢な皇帝に破壊されたつりがねは、ちいさな鈴として よみがえりました。すべてのひとのこころにやさしい響きをとどけています。権力者の横暴も、鈴の音まで破壊することはできませんでした。
あらすじでは省略しましたが、つりがねの音色が、とても丁寧に描写されています。
鐘の音を聞くと、生まれ変わったような気持ちになる、
悩みや心配事をふきとばす、さみしいものや病んだもの心に やさしく響き、
希望がうまれ、ゆたかな気持ちがめばえる。そんな音色です。
「意味的な描写」といっておきます。描写は、大切なところに用いられます。
鈴の音が 雪の大地だけでなく、世界中に 響きわたることを願います。
・・・
※『みどりいろのつりがね』 オトフリート・プロイスラ―作、ヘルベルト・ホルツィング絵、武本佳苗絵訳、好学社 2023年 (2024/10/13)