こねこのかん違い。でも、読者は知っています。
夜。
満月を 見あげて、こねこは 思いました。
ミルクの入ったお皿だ
のみたいな
こねこは、えいやっと
階段の 上から
飛び上がって みました。
でも、すってん ころりん。
届きません。
今度は 追いかけて みました。
道を 走って、
庭を 横切り、
野原を 駆けぬけ、
池のほとりまで。
それなのに、ぜんぜん 近づけません。
こねこは、木のてっぺんまで 行きますが、
届きません。
木のうえから、
こねこは、池の中に
もうひとつ ミルクの入ったお皿を 見つけました。
池に映った月です。
読者は知っていますが、こねこは知りません。
こねこは、
池の中へ ざぶんと 飛びこみました。
びっしょり
へとへと
おなかは ぐうぐう。
おうちへ帰る こねこ。
階段のうえに なにがあったと思いますか?
大きなお皿にはいった ミルク。
ああ しあわせ。
・・・
満月の夜の、白と黒だけのモノクロの世界です。
こねこには、満月がミルクの入ったお皿に見えたのです。子ねこの間違いですが、そのことを、読む前に、あるいは途中でも「お月様が、ミルクの入ったお皿にみえたのね」と子どもに教えておいたほうが良いかもしれません。読者は、そうすることで、こねこに一層共感できるのではないかと思います。
無邪気なこねこの挑戦を認めてあげたいと気持ちになります。子どもは、失敗しながら成長していくものです。月のように、どうやっても手の届かないものがあることを、こねこもいつか知るでしょう。でも、それは もう少し大きくなってから、知ることです。
・・・
※『まんまる おつきさまを おいかけて』 ケビン・ヘンクス作・絵、小池昌代訳、福音館書店 2005年 (2024/6/29)