
「やまんばのむすめ まゆのおはなし」(サブタイトル)
春の つめたい朝
やまんばかあさんが いいました。
「やまに はるの りゅうが でてきたよ」
雪山のあいだを ほそくながく のびる 地面は
りゅうのようでした。
やまんばかあさんは まゆと いっしょに
ヤマモモの お酒の たるを 山に はこびました。
ドン ゴロン ゴロン ドドン ゴロン
「りゅうだあ!」
雲のなかから、
りゅうが あらわれ、
ゴク ゴク ゴックンと たるのお酒を 飲みました
おや?
雲のなかに りゅうの こどももいます。
「さあ! しごとに でかけよう」
やまんばかあさんは りゅうの 背中に のって
まゆは りゅうのこの 背中に のって
空に のぼります。
りゅうは 輪を えがいて まわりはじめました
「あめが ふるよ!
りゅうが 春いちばんの あめを ふらせるんだ」
ドロン ゴロン ゴロン ドドン ゴロン
山を めがけて
雨は ざんざか ふりました。
雪解け水が 山を かけくだります。
谷川が りゅうのように みを くねらせています。
ドン ゴロン ゴロン ドドン ゴロン

「おきろー! おきろー! めを さませ」
まゆは、谷底の りゅう(激流)にむかって、大声で さけびました。
やがて
雨は やみ
そらは 春のいろに かすんでいまか。
「さあ、かえろう」
やまんばのかあさんが そういうと、
りゅうたちは 空に のぼっていきました。
そして、
りゅうの おやこの 姿が 見えなくなったとき・・・
空いっぱいに おおきな 虹が あらわれました。
・・・
龍のダイナミックな活動は、春の訪れを表現しています。
やまんばかあさんとまゆは、ヤマモモのお酒で龍が呼びました。龍は、春一番の雨を降らせ、雪を溶かします。雪解け水は、激流の川になりましたが、これから田畑を潤すことでしょう。絵と文は、スピード感があり、ダイナミックなタッチです。
おはなしの背景には、旧暦2月2日に行われる中国の民間行事「龍抬頭(りゅうたいとう)」という風習があります。龍が頭をもたげる日とは、春の農作業が本格的に始まるとされる日のことです。五穀豊穣をねがう風習があります。龍は、雨を呼び、豊作をもたらす象徴です。(Chat GPTから)
春の訪れをえがいた作品ですが、季節に関係なく、読むことができるでしょう。
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※『まゆとりゅう』 富安陽子文、降矢なな絵、福音館書店 2008年 (2025/5/2)