ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ぽとんぽとんは なんのおと』- 春の訪れと母の愛がかさなります

ながい冬ごもりをして、目ざめたくまの親子の会話です。

    

  

ある日 ぼうやは たずねました。

   

 「かーん かーんって おとが するよ

  かーん かーんって なんの おと?

   

 「きこりが 木を きる おとでしょう・・・

  きこりは ここまで こないから

  ぼうやは ゆっくり おやすみ」

 

   

ある日 ぼうやは たずねました。

  

 「ほっほー ほっほー おとがするよ

  ほっほー ほっほーって なんの おと?

  

 「ふくろうの こえでしょう・・・

  さあ、ふたりとも かあさんに だっこで

  あさまで おやすねよ」 

  

   

くりかえしです。

しーんと しずかなのは、

ゆきが ふっているからでしょう

つっぴい つっぴいって 鳴いているのは

天気が よいので ことりが うたっているのでしょう

      

   

どどー どどーというのは、

なだれの おと。

   

   

ある日、ぼうやは たずねました。

  

 「ぼとん ぼとんって おとが するよ

  ぽとん ぽとんって なんの おと?

  

 「あれは つららの とける おとよ・・・

  もう そこまで はるが きているのよ」

  

 「なんだか いい においだね」

       

  

 「あたたかな かぜが はなの においを はこんできたのよ・・・

  さあ、ぼうや、そとへ つれていって あげましょう」

  

              ・・・

春をむかえる喜びがつたわります。また、形の整った文章です。おはなしにリズム感があります。春が近づいていることを音で感じます。

       

また、わが子をや見守るかあさんぐまは、優しい言葉で、子ぐまの疑問にこたえています。子どもが不安にならないように言っています。かあさんぐまの姿に、母の愛を感じます。大人の読者は、おかあさんぐまを身近に感じて、読んでいくことでしょう。大人の読者にとって、主人公はかあさんぐまでしょう。

     

主人公は、客観的に決まるというよりは、「誰にとって」という観点から決まるように思います。

     

            ・・・

※『ぽとんぽとんはなんのおと』 神沢利子作、平山英三絵、福音館書店 1985年

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