ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ぽけっとくらべ』- 一等賞はカメ 

ポケットくらべをする動物たちの愉快な話です。

 

     

山ネコは、

人間から 盗んできた 

エプロンの ポケットをさして みんなに 言いました。

 

 「にんげんの つかっているもののなかで、

  ちょっぴり かんしんしたのは、これでありました」

    

ポケットから、

ハンケチ、アメだま、とけいを 取りだします。

    

 えらい、べんりなもんや ないか

    

どうぶつたちは、

3日後に ポケットくらべを することにしました。

     

     

当日

ブタが さいしょに 檀の上に あがりました。

こいのぼりみたいな 長い ポケットです。

豆を たくさん入れても 大丈夫と 自慢しています。

でも、底が ありません。

ブタくんは、落第です。

    

    

つぎは、

キツネ。

ポケットが 四十八も ついている 上着を きています

でも、

ポケットに いれたものが うまく 取りだせません。

キツネも 落第です。

     

    

三十一ぴきの サルが でてきました。

左右の むねに そろいの ポケットが ついています

でも、

ボスザルが、隣のサルの ポケットに 手をいれて 自慢しだすと、

みんなが 真似して、大混乱、おおさわぎ

サルも 落第です。

      

   

ライオンの審判長が カンガルーの ポケット(袋)を ほめますが、

カンガルーは、

普段着だといい、「きがえてから おめに かかりますわ」と

行って しまいました。

 

 

小さな ゼニガメが 

こうらから 首を つきだして いいました。

    

 「ぼくのポケット みてくれよ」   

 「どこに?」 

 「あるよお!」     

 「どこさあね?」「ないじゃないか」

    

カメは くびと 手足を ひっこめました。

   

 「ボクハ カラダガ ポケットナンダヨォ!

     

けっきょく、カメが 一等賞に なりました。

    

      ・・・

人物たちの口調が違います。山ネコは、「でありますから」「でありまして」と演説口調です。でも、「けっして ない。だけんど」と地がでてしまいました。ブタは関西弁です。「んだ、んだ」「つくるべえや」のタヌキ。「よんでくれたまえ」のライオン。カンガルーは「なんでございますの」と奥様口調です。人物の言い方を楽しめます。また、読みかたりの楽しいところです。

     

キツネがポケットに困って涙を流しているところを、タヌキは指をさして笑っています(上の絵)。一等賞になったカメを見ている、どうぶつたちの姿と表情もおもしろい。人物たちの滑稽さが絵でさらに膨らんできます。

    

      ・・・

※『ぽけっとくらべ』 今江祥智文、和田誠絵、文研出版 2005年  (2024/12/6)

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