タイトルをよく見ると、「どうぶつ」ではなく、「どうつぶ」です。
「どうつぶ」って、なんでしょうか?
・・・
ボボじいさんは、
鳥や どうぶつたちのために
おいしい 食べ物を 作ってあげています。
ある日、
へんな どうぶつが やってきました。
自分のことを、「どうぶつ」ではなく、「どうつぶ」と言います。
「たべるものは あるかい」
ボボじいさんは、
ケーキ、プディング、サラダ・・・をだしますが、どれも 食べません。
「にんぎょうは ないの?
とてもうまいぞ にんぎょうは」
「こどもたちの にんぎょうを たべるのは ひどい!」
にんぎょうを 食べるのを やめさせるために、
ボボじいさんは、
いいことを 思いつきました。
ボボじいさんは、どうつぶを 褒め 言いました。
「そんなに きれいなのは、じゃむ・じるを
たくさん たべるせいだろうね」
「じゃむ・じる? ・・・ にんぎょうかい?」
「じゃむ・じるは、小さなケーキ。
あおい とげとげの しっぽが もっと りっぱになるよ」
「おじいさん、じゃむ・じるを たくさん ください!」
「いいとも」
ボボじいさんは、じゃむ・じるを つくりはじめました。
くるみの ケーキ 7つ
たねいりの プディング 5つ
キャベツの サラダ 2さら
チーズ・ボール 15
スプーンでこねて、丸いボールを たくさん つくりました。
どうつぶは、
「とても うまいぞ」と言って、ぜんぶ 平らげました。
次の日も、じゃむ・じるを 食べにきました。
しっぽが すこし ながくなり、
あおい とげとげが ひかっています。
20日が すぎると、
しっぽが 長くなり、動きまわることが できなくなりました。
どうつぶは、
高い山に すわり、
長くなった しっぽを 山に まきつけました。
「とても うまいぞ ― じゃむ・じるは」
どうつぶは、もう、にんぎょうを 食べなくなりました。
『100まんびきのねこ』で知られるワンダ・ガアグ(1893-1946)の作品です。初版は1929年です。奇妙な動物の、不思議で不気味なはなしすが、ガアグの出身地、ボヘミアの民間伝承が背景にあるのかもしれません? どうつぶが食べるのは、どうして人形なのでしょうか? もしかすると、「人形」は「人間」の喩えなのかもしれません。「どうつぶ」は、もっと邪悪な存在だったのではないかと想像しました。
でも、「どうつぶ」と訳されたことや、ユーラスな絵で、すこし滑稽味のある絵本になりました。
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※『へんなどうつぶ』 ワンだ・ガアグ文・絵、渡辺茂男訳、瑞雲舎 2010年 (2024/12/2)