ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ねこのさら』- 「ねことさらで三両、いいじゃねえか」

「落語」の絵本です。

      ・・・

道具屋が、

江戸をはなれ、田舎を まわっていた。

   

茶店に はいり、

ふと 奥をのぞくと、

猫が おまんまを たべている。

    

   

 「うぬ・・・?

   

  

ねこのさらは、「絵高麗の梅鉢の茶碗」ではないか。

道具屋は びっくり

どうにかして、それを 手に入れたいと考えた。

     

   

道具屋は、

ねこに 愛想をいい、

茶屋の主人に こう言った。

   

 「このねこ、おれに 譲ってくれないかい?

     

 「勘弁してやってください」  

 「そうしたら こうしよう。かつぶし代に 三両おこう

 「こんな きたないねこに 三両なんて大金・・・」 

     

 「いいんだいいんだ」

 「そうですか・・・」

    

 「じいさん、あのさらで めしを やっていたんだろ」

 「へえ・・・」

    

 「ねこっていうものは、食いつけないさらじゃ 

  食わねえっていうから あのさらも もらっていこう」

     

 「あの茶碗、わたしが 気に入っておりまして

  あげるわけには いかないです」

   

 「いけないのかい? ねことさらで三両、いいじゃねえか

 

     

茶店のじいさんは、わけを はなした。

   

 お客さんは ご存じないかもしれませんが、

 あれは 高麗の梅鉢の茶碗と いいまして、 

 三百両

 人によっては、

 五百両、千両に なるものなのでございます。

       

 

道具屋は、(なんだ、じいさん しっていたのか)と心の中で つぶやいた。

    

     

 「じゃ どうして ねこのさらになんぞに しているんだい?」 

    

 「ねこのさらに していますと

  ときどき ねこが 三両で 売れますんで

   

        ・・・

道具屋と茶屋のじいさんの掛け合いのおもしろさがあります。

絵高麗の梅鉢を手に入れようとたくらむ道具屋。茶屋の主人は、道具屋のたくらみを知ってか知らずか、のんびりとした感じで対応しています。それだからこそ、最後のオチがきいています。「ねこのさらに していますと、ときどき ねこが 三両で 売れますんで」。人を騙そうとする道具屋への皮肉がきいています。絵高麗の梅鉢を売らずに、ねこを売るという茶店のじいさまは、なかなかの知恵者です。

     

また、このオチは、かなり知的なものに思えます。小さい読者には、説明が必要かも知れません。

          ・・・

※『ねこのさら』 野村たかあき文・絵、柳家小三治監修 教育画劇 2017年  (2024/8/2)

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