新美南吉の詩「天国」の絵本です。
詩を 引用します。
天国 新美南吉
おかあさんたちは
みんな一つの、天国をもっています。
どのおかあさんも
どのおかあさんももっています。
それはやさしい背中です。
どのおかあさんの背中でも
赤ちゃんが眠ったことがありました。
背中はあっちこっちにゆれました。
子どもたちは
おかあさんの背中を
ほんとうの天国だとおもっていました。
おかあさんたちは
みんな一つの、天国を持っています。
・・・
「背中はあっちこっちにゆれました」とは、
おかあさんは、
子どもを あやしていたのでしょう。
家事や仕事で 忙しく はたらいていたのかもしれません。
子どもだけでなく、
おかあさんにとっても、
子どもをおんぶする、背中は「天国」です。
絵本には、いろいろな姿のおかあさんが、描かれています。
子どもをおんぶしながら、
バケツの水(防火用水?)を運ぶ、戦時中の おかあさん。
籐製の乳母車に 子どもをふたり乗せ、
3人目の子どもを おんぶする おかあさん。
背中の子どもを、でんでん太鼓で あやす、
買いもの帰りの おかあさん。
自転車を 走らせる おかあさん。
子どもを おんぶして、おにぎりを にぎる おかあさん。
何かを している おかあさんです。
おとうさんは?
子どもを お風呂に 入れたり、
絵本を よんであげたり、
あやしたり、掃除機を かけています。
さいごは、祖父母の家に出かけた、5人家族の絵です。
「あとがき」には、いろいろな国のおかあさんが、ひも、籠、布で子どもをおんぶしています。詩の世界は、日本のおかあさんだけのことではありません。
絵による「補足と発展」です。
・・・
※『てんごく』 新美南吉詩、長野ヒデ子絵、のら書店 2023年 (2024/8/28)