赤いてぶくろを つるしている表紙の絵と タイトルは、読者への仕掛けです。
でも、なぜ、赤いてぶくろが いっぱいなのでしょうか。
ネッドと ドニーは、ふたごの兄弟です。
ある日、
ドニ―は、
赤いてぶくろの 片方を なくしているのに 気がつきました。
「きっと ジェイニーの家の庭に わすれてきたんだ」
2時間後
ジェイニーが
てぶくろを 届けてくれました。
つぎの日
おとなりさんが
赤いてぶくろを 届けて くれました。
学校の先生も 「ドニ―か、ネッドのだろう」と
赤いてぶくろを わたしてくれました。
ネッドと ドニーも、裏庭で 赤いてぶくろを 見つけました。
郵便屋さん
ゴミ集めの トムさん
牛乳屋さん
お店のご主人
トラックの 運転手さんも
赤いてぶくろを とどけてくれました。
赤いてぶくろが どんどん 届けられます。
てぶくろを どうしたら いいのでしょうか?
ネッドが 言いました。
「庭に つるしたらどうかな?
赤いてぶくろを なくしたひとは、
家の庭で さがしてください、という
はりがみを だすの」
おかあさんが やってきました。
「てぶくろを みせていただいても よろしいかしら」
おんなのこも やってきました。
「てぶくろを みせてくださいな」
子どもたちや おかあさん おとうさんが つぎつぎに やってきて・・・
てぶくろは とうとう ひとつだけに なりました。
ネッドと ドニーは、
「ひとりぼっちで さみしそうだね」と言って、
家の ひきだしに 入れました。
次の 冬も、
赤いてぶくろが ふたりの家に とどきました。
庭の〈 てぶくろの ロープ 〉に つるしてくださいと言って。
あなたが 赤いてぶくろを なくしたら、
ネッドとドニーの家を たずねて ごらんなさい。
〈てぶくろの ロープ〉に
ぶらさがっているかも しれませんよ
・・・
たくさんの赤いてぶくろが、集まりました。ドニーの赤いてぶくろのことを、周りのみんなが、気にかけてくれた結果です。ふたりは、あつまったてぶくろを 庭に手袋をつるし、てぶくろを失くした人が見られるようにしています。こころ温まるはなしです。
表紙の絵とタイトルは、読者への仕掛けだと言いました。裏表紙にも、たくさんのてぶくろがつるされています。読み手は、表と裏の表紙をひらいて、子どもの興味をひくように始めるとよいと思います。たくさんのてぶくろを印象づけてください。てぶくろは、みんなの善意の象徴です。
・・・
※『てぶくろがいっぱい』 フローレンス・スロボドキン作、ルイス・スロボドキン絵、三原泉訳 偕成社 2008年 (2025/1/4)