ふるはしかずおの絵本ブログ3

『つぐみのひげの王さま』- 「わたしたちの結婚祝いをするとしよう」

グリム童話です。

つぐみのひげの王さまと

「高慢だった」お姫さまが、結婚するハッピーエンドです。

     

    

むかし

美しいけれど

うぬぼれやで 高慢なお姫様が いました。

    

結婚相手にも、

「酒だる」「ひょろひょろ」「死神」「おんどり」「つぐみのくちぱし」

と悪口をいい、だれも 気に入りませんでした。

   

    

王さまは、たいそう お怒りになり、

姫を こじき楽師と 結婚させました。

王さまは いいます。

   

 「わしの 城に いるのは よろしくない

  ここから でていくのが よいぞ」

  

 

姫と 楽師は、大きい森に はいりました。

 

 「この うつくしい森は だれのもの?

 「ツグミヒゲ王さまのもの、あの人を ていしゅにしていたら、

  これは おまえのものだったのに」

    

    

ふたりは 草原を とおりました。    

 「この うつくしい みどりの草原は だれのもの?」

 「ツグミヒゲ王さまのもの」

 

 

ふたりは、大きなみやこを とおりぬけました。

 「この うつくしい 大きいみやこは だれのもの?」

 「ツグミヒゲ王さまのもの」

 

 

おひめさまは

ちっちゃな 楽師の家で くらしはじめました

おひめさまは

かご編み

糸つむぎを したり、

市場で 壺や せとものを 売ることを 命じられました。  

お城の 料理場の 女中にも なりました。

 

    

お城で、王さまの王子の 婚礼が ありました

おひめさまは、お料理を 家に持ってかえるため、

ちいさな つぼに いれました。

    

   

そのとき、

王子が はいってきて、

おひめさまを 大広間に ひっぱって いきました。

     

   

すると、

料理が はいった つぼが 落ち、

スープがながれ、料理のかけらが とび散りました。

   

     

おひめさまは

笑われ、にげだそうとします。

おとこのひとが つれもどしました。

それは、ツグミヒゲ王さまでした。

   

 「わたしは あの楽師

  あなたの うぬぼれを なおすためにしたのだよ

    

 「わたしは たいへん 間違ったことをしました。

  あなたの妻になる ねうちは ありません」

   

 「あんしんなさい・・・

  さあ、わたしたちの 結婚いわいをするとしよう」

   

国王も、宮中の人も みんな あつまり

ほんとうの うれしい お祝いが はじまったのです。

      

         ・・・

高慢なお姫さまを改心させるために、ツグミヒゲの王は、お姫さまにさまざまな試練を与えました。彼女は、つらい生活のなかで、じぶんの性格と他人にしてきたことを深く反省します。そのとき、ツグミヒゲの王による、救いと幸せが、突然訪れました。読者が期待するハッピーエンドですが、それはツグミヒゲの王の計画した通りのことでした。

        

大塚勇三さんの「あとがき」によると、こうした話は、1300年ごろのフランスの詩にもあり、北欧やイタリアの文書にもあるそうです。「数多くの無名の人たちによって語りつがれ、その人たちの望みによって、すこしずつみがかれ、変化してきたのです」。

   

「無名の人たちの望み」によって昔話が変わってきたのだとするならば、これから、どのように磨かれていったらよいのでしょうか? ツグミヒゲの王による救いではなく、おひめさまが自分の知恵と力で幸せをつかむはなしとして、さらに磨かれる必要があるように思いました。

      

        ・・・

※『つぐみのひげの王さま』 グリム童話 フェリクス・ホフマン絵、大塚勇三訳 ペンギン社 1982年  (2025/5/29)

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