語り手と木(かえで、かば、もみのき)の対話です。
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語り手が 尋ねます。
すみれと 背比べを しているの?
おかあさんの 木は どこにいるの?
ここよ わたしが おかあさんですよ
わぁ おおきな かえでのき
あなたが おかあさんだったのね
語り手が 尋ねます。
草と かくれんぼ しているの?
おかあさんの 木は どこにいるの?
ここよ わたしが おかあさんですよ
わぁ おおきな かばのき
あなたが おかあさんだったのね
虫と おはなし している あかちゃんの 木
おかあさんの 木は もみのき
語り手が、言います。
かえでの木 赤くなって うれしそうね
秋が きたから 赤くなったの
おかあさんと いっしょでしょ
かばの木 黄色くなって うれしそうね
秋が きたから、黄色くなったの
おかあさんと いっしょでしょ
もみの木 いつも 緑で げんきだね
冬が きても 緑だよ
おかあさんと いっしょでしょ
みんな おおきくなあれ
前半は、「あかちゃんの き こんなところに みぃつけた・・・おかあさんの きは どこにいるの?」という語り手と、「わたしが おかあさんですよ」という、かえで、かば、もみのきのおかあさんとの会話です。
後半は、語り手と「おかあさんと いっしょでしょ」というちいさな木との会話からできています。語り手と人物の会話の詩です。
「わたしが おかあさんですよ」は、堂々としたおかあさんの姿が絵で表現されています。「おかあさんと いっしょでしょ」は、おかあさんの木が、大好きな子どもの木の言葉です。ふたつの文は、対応しています。ふたりの目と目が合っている姿が見えます。
語り手は、さいごに「みんな おおきくなあれ」と、子どもの木を励ましています。読者も、ちいさな木(子ども)を見守りたい気持ちになります。
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※『ちいさな き』 神沢利子作、高森登志夫絵、福音館書店 2009年 (2024/11/20)