ふるはしかずおの絵本ブログ3

『たまごからうま』- ベンガル地方の おおらかな笑い話

     

 「あー、らくが したい、らくが したい

  あるくのは くたびれるなあ。

ダーは、

歩かなくても いいようにね

市場に 馬を 買いに 行きました。

     

     

 「だんなさん うまを おさがしですか

  いい うまを おやすく おうりできますよ

 

 「えっ、うまを?」

     

 「やすくできるのは、まだ たまご だからなんです。  

  でも、じめんに 置くと あっというまに たまごが かえり

  うまが とびだしますよ」

     

      

うまの たまごとは かぼちゃのこと。

ダーは かぼちゃを 買わされました。

  

 

帰り道

ダーは

かぼちゃを 道端に おいて 眠ってしまいました。

きつねが かぼちゃに つまずき

かぼちゃは ドッポン、バカッ!

   

ダーは、

かぼちゃが 割れ、きつねが 逃げていくを 見て、

うまが うまれたと 思い、きつねを おいかけました。

 

   

きつねが 森に にげこむと、

こんどは さるを うまだと 勘違い

さるは 池に とびこみました。

  

  

池で のんびりしていた とら。

ダーは とらを うまと 勘違い。

   

 「おっ、おいかけているうちに 

  もう こんなに おおきく なったとは!

     

ダーは とらの 背中に とびのりました。

 

驚いた とらは むちゅうで はしりだしました。

とらは ひとばんじゅう 

野を こえ、山を こえ はしりました。

夜が あけました。

   

  

 「ひえーっ! こ、このもようは とらじゃー!

    

ダーは 

木の枝に とびうつり、たすかりました。

でも、ダーは 懲りずに 考えます。

  

 「こんど かうときは、なんの たまごにしたら ええかのう?

     

       ・・・

ベンガル地方の笑い話です。

後半は、きつねがさる、さるがとらに変わり、おはなしはずんずん展開していきます。とてもリズミカルで、たのしい読書の体験がうまれます。読者は、馬はたまごからうまれないこと、馬のたまごがかぼちゃであることを知っています。ダーの勘違いと行動が いっそうおかしく感じられます。「人物は知らないのに、読者は知っている」のパターンです。

  

再話者の酒井公子さんによれば、うそ、ありえないことを、ベンガル地方では、いまも「うまのたまごだ」と言うそうです。また、この話の類型は、アジア各地に見られるとのことです。

     

       ・・・

※『たまごからうま』 酒井公子再話、織茂恭子絵、偕成社 2003年  (2024/10/23)

SHARE