働き者のイワンの痛快な活躍。ロシア民話です。
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あるとき、おうさまが お触れをだしました。
「空飛ぶ船をつくり、
城にとんでくるものを 姫のむこにむかえる」
お触れを聞いた イワンは、
くろパンと みずだけを もって ボロ服のまま でかけました。
森で、おじいさんと 出会います。
くろパンと みずを 分けてやると
空飛ぶふねの つくりかたを 教えてくれました。
おじいさんは、ふねをつくりあげたイワンに 言いました。
「とちゅうで であったものを 仲間にして いきなされ」
おじいさんが、つぎつぎに現れます。
早耳の スリィハーロじいさん、
早足の スコロホードじいさん、
鉄砲名人の ストレリヤーロじいさん、
冬の主の マローズ=マロービチじいさん
イワンは、みんなを仲間にしました。
「おお、きたぞ! おむこさまだぞ!」
でも、おりてきたのは、ボロボロ服のイワンです。
王様も
お姫様も おこりだし、泣きだしました。
王様は、無茶な命令を だしました。
「遠いくにの 鳥をとってこい。
できなければ、おまえを ころしてしまうぞ」
鉄砲名人の ストレリヤーロが 狙いをつけ ずどーん。
早足の スコロホードが 飛ぶように かけだす。
早耳の スリィハーロじいさんが
鳥をもってかえる足音を ききました。
王様は にえたぎった風呂に 5人を閉じこめます。
冬の主の マローズ=マロービチじいさんの出番です。
ひゅっ ひゅっと吹くと
あたりは、すっかり 涼しくなりました。
「おいらに ぐんたいが あったらなあ」
イワンが ため息をつきました。
鉄砲名人の ストレリヤーロじいさんが、
鉄砲を ひとふり、ふたふり、三ふりすると・・・
たくさんの 軍隊が 現れます。
お城に乗り込み、イワンが言います。
「さあ、とっとと、このくにから でていって もらおう」
王様も、けらいも、追いだし、
イワンが この国を おさめるようになったということです。
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ロシアで人気のある昔話です。 魅力的な人物・イワン。奇想天外なの活躍と痛快な結末がやはり魅力です。
「ここに登場する超能力をもった人物たちは、人間というものは、だれでもそれぞれどこか他人よりすぐれたをものをもっている、ということをあらわしています」。作者の西郷竹彦さん(1920-2017)の言葉です。 続けてこう言われています。「たいせつなことは、これらの人物たちが、ひとりひとりばらばらではあっては、たいしたことはできない、ということです」。
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※『そらをとぶふね』 西郷竹彦再話、滝平二郎絵、岩崎書店、1993年 (2024/7/15)