ふるはしかずおの絵本ブログ3

『そこつ長屋』- シュールな落ち

らくごの滑稽話「粗忽長屋」の絵本です。

   

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浅草寺の仁王門の前に 人だかりがしています。

  

 「いきだおれだよ」

   

八五郎が いきだおれを 見ると

     

 「くくく、熊のやろうだ

  おい、しっかりしろ」

     

 「知り合いなら お前さんが ひきとってくれないかな」

    

 「こうしましょう、ひとまず 当人をつれてきます」 

     

 「なんだい、当人って?」

  

        ・・・

八五郎は、熊のところに 急ぎます

   

 「おい、熊!

  お前は、ゆうべ、浅草でもって 死んでるよ!」

 「俺が? 死んだような心持は しねえぞ

    

 「俺は、この目で 見てきたんだ。まちがいねえんだよ・・

  死体を ひきとりにいくんだ」

 「だれの?」

 「お前のだよ」

 「俺が 俺の 死体をひきとりにいくの?」

  

        ・・・

ふたりは 観音様の仁王門に もどります

    

 「当人をつれてきました!」

   

 「やれやれ、かわったひとがが ひとり ふえちゃったね・・・」

  

 「兄貴・・・、これが俺か」

 「そうだよ」

 「顔が 長いんじゃないの?」

 「夜露にあたって のびたんだ」

     

  

 「・・・あ、あーっ! これ、俺だ!

 「そうだろ 泣くな泣くな」

  

 

 「よーく ごらんなさいよ。

  お前さんじゃないんだから、ね」

     

 「うるせえな、当人が見て、自分だって 言ってんだ

  まちがいねえや

  

 「うううっ、でも兄貴。

  なんだか わからなくなってきちゃった」

    

 「なにが?」

   

 「だかれているのは、たしかに俺だが

  だいている俺は、いったい だれだろ?

     

          ・・・

ゆきだおれの人間を熊五郎だと思い、本人に確かめさせると言う、なんとも間の抜けた八五郎です。熊五郎も「死んだ心地はしない」ととぼけたことを言い、自分の死体をいっしよに引きとりに行く人物です。落語に、うってつけの粗忽者たちです。笑える落語ですが、最後のオチはシュールです。八五郎と熊五郎の会話は、不条理劇のようです。

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※『そこつ長屋』 野村たかあき文・絵、柳家小三治監修、教育画劇 2019年  (2024/8/11)

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