ふるはしかずおの絵本ブログ3

『この まちの どこかに』 

大都会に降り立った、ぼく。ぼくの独白のような文章で語られます。

  

    

 まちの なかで

 ちいさな ものは、

 どんな きもちで いるのだろう

    

     

雪が降る 大都会は

知らない ひとばかり 

こわい おとも いっぱい

とおりは いつも 騒がしい

あたまが パンクしそうに なるだろう

   

 でも、しんじている

 きみは きっと だいじょうぶ

  (「きみ」っていったい誰だろう?)

    

やくに たちそうなことを おしえてあげる

裏通りを とおると いいよ

暗すぎる みちは だめ

   

おおきな いぬが いる 家は ちかづかないほうが いいよ

   

きみに ぴったりの 隠れ場所は

この クワの 木の した。

  (「きみ」は猫! )

   

   

さかなやさんは しんせつだよ

おねだりしたら、さかなを くれるよ

 

きみは 音楽が すきだよね

ピアノを ひいている 家

コーラスの 練習を している 教会が あるよ

きみなら、窓の でっぱりに のれるだろう

  

  公園で「LOST」(行方不明)の張り紙を張るおとこのこ。

  ネコの絵がかいてあります。

  かれは、これ以前にも張り紙を張っていました。

 

  

でも、家が いちばん あんぜんだよ

ごはんが たっぷり

毛布も ある

   

帰りたいと おもったら

まっすぐに かえっておいで

    

 しんじている

 きみは きっと だいじょうぶ

    

       ・・・

「このまちのどこかに」のタイトルは、謎めいていました。おとこのこが、雪がふる街の中を歩き回っているのもはじめはよくわかりませんでした。とちゅうから、かれは行方不明の猫をさがしていることが明らかになります。

この事実が明らかになると、かれの切なる思いが伝わってきます。凍てつく街の絵は、彼のこころと響き合う情景です。絵は、彼のこころ、ストーリー、情景を語っています。

      

「まちの なかで ちいさなものは どんな きもちで いるのだろう」という文が冒頭にあります。また、原題は、SMALL IN THE CITY 猫だけでなく、街の「ちいさなもの」への共感がみえます。

     

『おはなをあげる』『うみべのまちで』の作者、シドニー・スミスは、この作品で、2019年のニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞、2020年のエズラ・ジャック・キーツ賞を受賞しました。

       ・・・

※『この まちの どこかに』 シドニー・スミス作、せなあいこ訳、評論社 2021年

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