ふるはしかずおの絵本ブログ3

『くんちゃんの もりの キャンプ』- 「ひとつの経験をする」くんちゃん

いつもの くんちゃんです。失敗だらけですが・・・

        

         

ある日

いとこの アレックスが

くんちゃんを キャンプに 誘いました

その途中

ふたりは、こまどりに 会いました

こまどりは、

草や 木切れで 巣を つくっていました

  

 

池のあひるにも 会いました。

くんちゃんは あひるに たずねました。

      

 「どうやったら 水のうえに うかんでいられるの?」

 「およいでいるからだよ・・・

  ほら、あしで かいているでしょ」

 「ふうん」

    

小川で かわせみに 会いました

かわせみは

さっと 水に もぐり、魚をとりました

   

 「きみは どこへ いくの?」

 「アレックスといっしょに キャンプに いくんだよ

  かえりに また あおうね」

    

ふたりは、湖のほとりで キャンプをします

夕ごはんを食べて、寝るところを つくります

くんちゃんは、こまどりを 真似て 

木の上に 寝床を つくりました

でも

真夜中に

地面に 落ちてしまいました

  

   

湖で 泳ぐときは あひるの真似をして 失敗しました

  

魚をとるときは カワセミの真似をして 

池に パシャ―ン

魚は とれません

 

 

かえり道、分かれ道が 3回 ありました

  

    

くんちゃんは 

かわせみに 会った ところ

あひるに  会った ところ

こまどりに 会った ところを 思いだし、

正しい道を えらび

無事に 家に つきました。

   

 「キャンプは どうだった?」

 「おもしろかったよ」

   

 「くんちゃんはね、こまどりみたいに 寝ようとしたり

  あひるみたいに およごうとしたり

  かわせみみたいに さかなを とろうとしたんだよ

     

 「でも、かえりみちを ちゃんと おぼえていたのは

  ぼくだったよ

      

               ・・・

好奇心旺盛なくんちゃん。キャンプでは失敗ばかりでした。でも、帰り道をおぼえていたくんちゃんです。キャンプへ行く途中、こまどり、アヒル、かわせみとたのしい会話をしていた経験がいきました。くんちゃんは、アメリカの哲学者・教育学者のデューイのいう「ひとつの経験」をしました。その経験は、まとまりがあり、個性的で、自己充足的な経験です。キャンプの経験を通して、くんちゃんの自己肯定感をたかめたことでしょう。また、次の行動をする能力や意欲を高めたことでしょう。

            

ドロシー・マリノ(1912–2011 )さんの「くんちゃん」シリーズは、子どもが出合ってほしい絵本です。『くんちゃんのだいりょこう』『くんちゃんのはじめてのがっこう』『くんちゃんのはたけしごと』 などがあります。

              ・・・

※『くんちゃんの もりの キャンプ』 ドロシー・マリノ作、間崎ルリ子訳、ペギンン社 2023年  (2025/6/20)

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