
TWO BAD ANTS(原題)
「わるい ありたち」というより、2ひきのアリの冒険話です。
食べもの探しに いった アリが
キラキラ光る ものを もってきました。
女王アリが、
かりり、かりかりかりっと 食べました。
みんな、女王アリが 幸せいっぱいな様子に 気がついて、
その食べ物を 捜しに 出かけました。
アリたちが
着いたのは、不思議な ところだった。
(家のなかです。絵が教えています)
アリたちは、きらきら ひかるものを めざして おりてった。
(砂糖の壺のなか)
いっぴき いっこずつ 運んでいく。
2ひきの アリが おいてけぼり。
でも・・・
「ここにいたら いつまでも
まいにち おいしいの 食べられるんだもの」
2ひきは 食べに食べ うごけなくなって ねむってしまった。
夜が あけて、
でかいスプーンが ねむっている 2ひきのアリを すくいあげた。
2ひきのアリは、ちゃいろの おゆのなかに おっこちた。
おおなみ こなみが おそいかかる。
おぼれそうな アリたち。
おゆが かたむいて
あなに すいこまれそう。
あわてて はいでた アリたち。

こんどは パンのなか。
でも、トースターで 焼かれ、
焼けこげると おもったとたん、
ぴょーんと パンが とびあがり、アリたちも すっとんで でた。
おちたところは ディスポーザー。
ぐるぐる まわって 目がまわり やっとのことで ぬけだした。
つぎは、コンセントの 穴。
でも、不思議な力(電磁波)で とばされた。
夜
なかまの アリたちが やってきて、
2ひきの アリは 巣穴に かえった。
女王アリが ありがとう おいしいよと
いってるみたいに きこえてくる そのひびき・・・
2ひきは さいこうだなあ ここはと おもったんだよ
・・・
絵と文は、アリの視点から表現されています。家の外壁は「山」、コーヒーは「ちゃいろのおゆ」、人間の口は「まっくらなあな」、パンは「まるい おおきな あなだらけのかくれが」、コンセントは「くらいあな」です。
「人物(2ひきのアリ)は知らない、読者は知っている」という人物と読者の関係が、絵本の体験をつくります。読者は、アリの目になって、アリの身になって、2匹のアリの冒険についていきます。
でも、読者はアリではありませんし、アリの知らないことを知っています。読者は、2ひきのアリを外側から、異化してみる体験もします。同化体験と異化体験がないまぜになった「共体験」です。
訳者の木島始さんは、「小さな子どもが耳からきくだけで、つぎつぎ話のすじみちがわかるように訳してみよう」と考えて、翻訳されました。「耳からきく」と言う観点は、絵本の場合、とてもたいせつです。
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※『くいしんぼうのあり』 クリス・ヴァン・オールズバーグ作・絵、きじまはじめ訳 ほるぷ出版 1989年 (2025/3/11)