ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ぎふちょう』- 「林全体がひとつの生きもの」

卵から、幼虫、さなぎを経て、チョウに羽化するまでを描いた絵本です。たくさんの動植物が、絵本に描かれています。

    

    

ぎふちょうは、

日本海側に 生息する

早春だけに現れる アゲハチョウの仲間

  

  

ブナの林に ぎふちょうが 飛んでいる

めすが かんあおいの葉っぱのうらに 10このたまごを うみつけた

   

  

たまご

だにに たべられ、

8つに なった

たまごから 小さな毛虫が うまれた

アリが 毛虫を 3ぴき つれていった

    

     

毛虫は、

皮を ぬぎ

おおきな からだになった

    

毛虫たちは、つるありどおしの 花が 咲くころ

さなぎに なる

ねずみに たべられる さなぎもある

  

   

さなぎは 長い眠りに ついた

    

  

 夏

 秋

   

      

 冬

 さなぎは 

 落ち葉と ゆきの下

    

   

ひざしが あたたかくなり

冬が おわり

しょうじょうばかまの 花が さいた

   

   

 さなぎのからが ぱりっと われた

     

    

縮れた羽のまま おおあわてで 木に よじのぼる

足を とめ

ゆっくりと 羽が のびてきた

 

 ゆきぐにに 春が きた

   

              ・・・

ぎふちょうの生態を精密に描いています。言葉による説明は、最小限に刈り込まれ、絵が「ぎふちよう」の住む世界を表現しています。200種類以上の生きものと植物も、描きこまれています。

      

秋のブナの林の絵(上の絵)には、カモシカ、トウホクノウサギ、アマガエル、カマドウマの仲間、ヤブコウジ、ツルアリドウシ、エゾユスリハ、ナメコ、アシナガタケの仲間、カワリハツ、スッポンタケの仲間、ブナサルノコシカケが、描かれています。

   

   

作者は「あとがき」に書いています。

「蛹のつもりで林にねころんで目を閉じると、交錯する無数の生きものたちが、ひとつの生きもののように感じました。わたしが感じている 林全体がひとつの生きものなのだと」。

    

ぎふちょうを題材として描きだそうとした考え・主張を語っています。

    

         ・・・

※『ぎふちょう』 舘野鴻 作・絵 偕成社 2013年  (2025/3/5)

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