ふるはしかずおの絵本ブログ3

『きつねとねずみ』- 巣穴に入って身をまもる

『ビアンキ動物記』で有名なロシアの児童文学者・ビアンキ(1894-1969)の絵本です。

   

     

きつねの だんなが やってきた。

    

 じろ。

 じろ。

 じろ。

  

ねずみを 見つけて 言いました。

   

 鼻が どろんこ

 どうしたんだい?

    

 じめんを ほって すあなを つくったのさ。

    

   

 なんだって すあなを

 つくったんだい?

     

 きつねさん。

 あんたから かくれる ためさ。

  

   

きつねは すあなの前で 待ち伏せしますが、

あなには 寝る部屋も あります。

ごちそうの くらも あります。

   

 ほりかえしてやるぞ!

    

 おあいにくさま。

 よこあなから

 にげてしまうよ。

  

 ほら、このとおり!

 

 

きつねの だんなは 

しょんぼり。

すてきな ごちそうに 逃げられた。

   

         ・・・   

リズミカルで、わかりやすい文章です。ユーモラスな感じもあります。また、きつねとねずみの会話は、二人の人物の性格を浮きぼりにします。たくらみを隠したきつねの表情、獲物をねらう表情、ねすみを逃した情けない表情など、擬人化されたきつねの表情も 見どころです。絵を読むことで、きつねの心を想像できます。ねずみも擬人化されていて、スコップを持っています。
   

見えない地面の下も描かれています。身を守るため、ねずみの巣穴には、寝室、ごちそうのくら、逃げみちがあります。生きるために、こうした迷路のある巣穴が必要です。

      

かしこいねずみを きつねがつかまえようとしても、そうはいかない世界です。

         

      ・・・

※『きつねとねずみ』 ビターリー・ビアンキ作、山田三郎訳絵、内田莉莎子訳、福音館書店 1967年   (2024/7/21)

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