
戦争中、上野動物園で、3頭のぞうが 殺されました。
実話です。
戦争が はげしくなり
東京は まいにち、まいばん 爆弾が
雨のように ふり落されて きました
動物園の おりが
爆弾で こわされると、たいへんです
そこで、
ライオン、トラ、ヒョウ、クマ、ダイジャを
毒を のませて ころしました。
3頭のぞう
ジョン、
トンキー
ワンリーも
ころされることに なりました
ジョンは
えさを 与えられず
17日目に 死にました
トンキー
ワンリーにも
えさを あたえませんでした
だんだん 痩せ細って、元気が なくなりました。
ぞう係の ひとが 来ると
トンキーと ワンリーは、
ひょろひょろと からだを おこして
からだを せなかで もたれあって
芸当を はじめたのです。
うしろあしで たちあがりました
まえあしを おりまげました
はなを たかく あげて ばんざいを しました
ぞう係のひとは、もう、がまんができません
「さあ、たべろ、のんで くれ」
動物園のひとたちは、
みんな、これを見て 見ないふりを しました

しかし
ころさなければ ならなかったのです
トンキーも、ワンリーも
ついに 動かなくなり
ワンリーは 10幾日目に
トンキーは 20幾日目に
どちらも ばんざいの 芸当を したまま 死にました
みんな、声をあげて 泣きました
どの ひとも ぞうに だきついたまま
こぶしを ふりあげて さけびました
「せんそうを やめろ」と
3頭のぞうは、
いま、動物園の 石のお墓に ねむっています
・・・
戦争のために殺された動物たち。そして、死なせなければならなかった飼育員の苦しみが、伝わってきます。ぞうが芸当を始める場面は、とても辛く涙がでます。戦争とはなにかを、動物の運命を通して知ることができます。平和の尊さを学びます。
・・・
※『かわいそうなぞう』 土家由岐雄作、武部本一郎絵、金の星社 1970年
【追記】
戦争の悲劇をえがいた絵本ですが、『かわいそうなぞう』には、事実とは異なるところがあります。動物園の猛獣やぞうを殺処分する直接命令は、1943年8月16日でしたが、この頃は、まだ連日のように東京が空襲を受けていたわけではありません。空襲があるため、猛獣の殺処分がおこなわれたのではなく、戦意高揚のためであったと言われています。
この悲劇が、空襲ではなく、国民の戦意高揚をはかるところに原因があったという事実は重要です。動物のいのちが戦争遂行のプロパガンダに利用されました。
「戦争は 戦争の目で ものを見るのよ」(アリス・ウォーカー)
(2025/10/5)









