民衆の知恵をつたえる、中国の民話です。
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むかし、
中国に えんま様の お祭りが ありました。
村のひとたちは お供えのものを やってきました。
えんま様は、
お供えの いちばん少ない、おひゃくしょうを
こらしめるようにと、鬼たちに命じます。
鬼たちは、
稲が 実らないように、
「あたまが ほそく、ねっこが ふとくなる」魔法をかけました。
お堂に すんでいる じいさんが、
鬼たちの 魔法を
おひゃくしょうに おしえました。
おひゃくしょうは、
稲ではなく、さといもを 植えました。
さといもは、大豊作。
「まんなかを ふとく、うえと したを ほそくする」魔法をかけました。
おひゃくしょうは、とうもろこしを うえました。
とおもろこしは 大豊作。
えんま様は、かんかんです。
「うえから したまで たいぼくのように ふとくしてやれ」
こんどは、さとうきびを うえました。
さとうきびは どんどん 育ち、
おひゃくしょうは、大金持ちに なりました。
えんま様に叱られた 鬼たちは、また魔法をかけます。
「あたまを むっくり、したを ひょろひょろ」
おひゃくしょうは、
こんごこそ、稲を うえました。
その年は、たくさんの おこめが とれました。
それからというもの、
えんま様は、2どと おひゃくしょうの じゃまを しませんでした。
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お百姓と鬼の知恵くらべです。
佐藤忠良さんは、人間臭いえんま様と鬼(上の絵)を描いています。彼らは、権力者の姿を髣髴させます。お百姓は、権力者に屈しないつよさを持つ「したたかな」人物です。えんま様と鬼に象徴される権力者を、知恵を使ってやり込める民衆のイメージが投影されています。
また、「あたまが ほそく、ねっこが ふとくなる」「まんなかを ふとく、うえと したを ほそくする」ものは、なーんだというように謎解きのおもしろさも感じます。
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※『おひゃくしょうとえんまさま』 君島久子再話、佐藤忠良画 福音館書店 2008年 (2024/9/9)