
インドの大昔の物語「ラーマーヤナ」より(サブタイトル)
風の神 ワーユに むすこが うまれました。
ハヌマンと 名づけました。
ハヌマンの 子どものころの はなしです。
ハヌマンは
おひさまに 心を奪われ、
おひさまに むかって 飛びはねました。
おひさまは
雲のうしろに かくれて しまいました。
それでも、ハヌマンは 空を およいで おいかけます。
神々の王 インドラは、
乱暴な ハヌマンに すっかり はらをたて
もっていた きねバジラーを なげつけました。
ハヌマンは まっさかさまに じめんに 落ちていきました。
風の神 ワーユは、
ハヌマンが うごかないのを 見て
たいそう 悲しみ、この世から すがたを かくしました。
おそろしい あらしが ふきあれました。
くうきが なくなり
にんげんは たおれ
どうぶつたちは みな しんでしまい
木も 花も しおれました。
神々の王 インドラは、
天の国、地の国、地の下の国を めぐり
ワーユを さがしました。
世界の底のそこで ワーユを 見つけ いいました。
「ハヌマンは いきかえる。
そして、やがて、
だれよりも ちからのあるものに なるであろう」

風の神 ワーユは よろこび、この世に もどりました。
世界は、もとどおり、いきいきと うごきはじめました。
ハヌマンは、そののち、
すぐれたちからをもつ りっぱな神に なりました。
ハヌマンの活躍は、『ラーマーヤナ』という物語に かかれています。
インドの人たちは、ハヌマンの物語を 大切に語りつたえています。
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インドの神々の物語ですが、とても人間くさいところがあります。おひさまを追いかけるハヌマンは、現代のストーカーのようです。「わしが かぜのかみを みつけだして、よろこばせてやらねばなるまい」「かぜのかみよ、かんべんしてくれ・・・だが、そう おこるな」は、インドラの言葉ですが、神々の王のことばとは思えないほどです。
ラマリャンドランの絵は、インドらしい雰囲気のある絵です。
ゾウの「アイラーバタ」が登場していますが、面白い顔をしていて、とてもユーモラスです。
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※『おひさまを ほしがった ハヌマン』 A.ラマチャンドラン作・絵、松居直訳、福音館書店 1997年(初出「こどものとも」1973年)