
雨の日曜日、教会の帰り、
ジェイと おばあちゃんは バスに 乗りました。
ふたりは、どこに 行くのでしょうか?
バスには、
手品の 得意な 運転手の デニスさん
ギターの音合わせをする おとこのひと
チョウをいれた びんを かかえている おばさんたちが
乗っています。
おばあちゃんは みんなに 「こんにちは」と 言った。
「なんで ぼくたち、いつも あそこへ いくの?」
と、ジェイは 言った。
目の 不自由な おとこのひとが 乗ってきた。
「みえないって、たいへんだろうな」
「なにをいっているの? ジェイ
目が 見えなくたって 耳でも みられるのよ」
おとこのひとは 言った。
「そのとおり。はなだって みられますよ」
ギターのひとが 歌を うたいはじめた。
目の不自由な 人が ささやいた。
「音楽の 魔法を かんじたかったら、
目を つむると いいですよ」
おばあちゃん、ジェイは 目をとじた。
うつくしい メロディーに つつまれ、
ジェイは からだじゅうで 音楽を 感じていた。
歌が 終わると、
みんな、むちゅうで 拍手をした。
「マーケット、しゅうでんです!」
ガタガタの道、壊れたドア、落書きだらけの窓、板をうちつけた店の 街。
ジェイと おばあちゃんが やってきたのは
〈 ボランティアしょくどう 〉だった。
そこには、めぐまれない ひとたちが たくさん 集まっていた。

「みんな、こんにちは! ぼく やっぱり、きて よかった!」
「さあ、はじめましょ!」
・・・
バスの中では、人と人がふれあう時が、流れています。
バスの乗客に、「こんにちは」と挨拶するおばあちゃん、ジェイも真似して、にっこり挨拶をします。目の不自由な人との会話するおばあちゃんとジェイ。ギターを演奏し歌う人に、バスの中のみんな、拍手です。目をとじて、音楽を感じるジェイ。〈ボランティアしょくどう〉に来てよかったと思う、ジェイ。身近な人やものに感動するジェイ。そんなジェイをみちびく、おばあさんの姿が印象的です。
「人間的感動の大部分は人間の内部にあるのではなく、人と人との間にある」
フルトヴェングラー、芦津丈夫訳『音楽ノート』
・・・
※『おばあちゃんと バスにのって』 マット・デ・ラ・ペーニャ作、クリスチャン・ロビンソン絵、石津ちひろ訳 鈴木出版 2016年