
ある森に 3とうの シカの兄弟が すんでいました。
1ばんめの にいさんは おおきくて 力持ち
2ばんめの にいさんは おおきくて 早足
すえっ子は にいさんの 半分くらいで
「はんぶんくん」と 呼ばれていました。
ある日、
トラが あらわれました。
にいさんたちは かなわないと くびを 横にふりました。
はんぶんくんは いいました。
「おい、トラ! ぼくに かかって こい!」
トラは
ちいさなシカが どうどうと しているので
なにか わけがあるに 違いないと 考えました。
「おまえさんの そのつのは なんに つかうんだね?」
「つきさすためだ」
トラは こわくなって はしって にげました。
トラは
キツネに あいました。
「きみを つきさせるわけないだろ」とキツネに言われ、
トラは いそいで 戻ってきました。
すると、また
はんぶくんくんが いいました。
「ぼくの からだの てんてんを かぞえてみろ。
ブタを まるのみする ヘビと おなじくらい ある」
「なんで そんなに てんてんが ついているんだ?」
「トラを 1とう 食べるたびに ふえていくんでね」
トラは こわくなって はしって はしって にげました。
キツネに てんてんは 生まれつきだと言われ
トラは かんかんに 怒りましたが、
3回目も はんぶんくんに やりこめられます。

4回目は、
トラは キツネを 背中にのせて やってきました。
すると、はんぶんくんは 言いました。
「キツネ! ありがとう うまそうな トラを つれてきてくれて」
トラは ぎょっとして ぜんそくりょく 逃げ去りました。
キツネは?
木の枝に ひっかかって 気を うしなっていました。
にいさんたちは 言いました。
「かしこい おとうとよ」
「ゆうかんな おとうとよ」
・・・
にいさんたちの半分の大きさしかない「はんぶんくん」。にいさんたちのようには、力持ちでも、早足でもありません。「みそっかす」です。でも、トラをやり込める勇気がありました。知恵もあります。
トラは、すこしとんまに 描かれています。キツネは、ずるがしこい感じです。絵も人物の性格をしっかり描いています。トラの目の表情がいきいきと描かれています。
・・・
※『おおきなトラとシカのはんぶんくん』 バーニス・フランケル作、レナード・ワイスガード絵、こみやゆう訳 好学社 2021年 (2025/4/2)