ふるはしかずおの絵本ブログ3

『あめだまを たべた ライオン』- 「ライオンなら かえるや くさは たべないもん」

もし、ライオンが「うおっ」と吼えることができなくなったら・・・

     

       

ライオンの ルルが、

おおきな あくびを したとき、

空から 光るものが 落ちてきました。

  

それは・・・

すきとおった きいろい ちいさな あめだまでした。

ルルは、あめだまを 飲みこみました。

  

   

狩りに でかけた

ルルは、鹿を 見つけました。

うおーっと ほえようと しました。

    

でも、

のどから てた声は

 

  ニイ……

   

もういちど うおーっと ほえようとしても・・・

 

  ニイ……

  

    

ひょうの ペペが 笑って いいました。

   

 「ライオンって やはり ねこの しんるいなんですね」

     

     

ルルは、ぺしゃんこに しょげて

みっかも 穴ぐらしです。    

こうさぎが やってきました。

   

 「おじさん、かなしいんだね」

     

 「ん、おなかが すいているんでね

    

   

こうさぎは、どこかへ 行ってしまいましたが、

すぐに 戻って きました。

かえるを くちに くわえています。

     

   

 「おいしいよ

    

ルルは、目をつぶって 飲みこみました。

  

 「おいしいね

    

ルルは、

こうさぎが 持ってくる かえるを 食べ、

草の はっぱを 食べました。

    

10日目に

ニイ …… がなおり、元の声に もどりました。

ルルは、うおーっと ほえました

     

     

あくる日

ルルは、こうさぎに むかって 言いました。

     

 「おじさんは ライオンなんだよ」 

 「ライオンなら かえるや くさは たべないもん」

 

ルルは、

かえるや くさを 食べて 

生きていたのを 思いかえすと

うさぎを たべたいと 思わなく なりました。

      

 アフリカの みどりの もりの おはなしです

     

            ・・・

ライオンは勇ましくうおーっ」と吼えるのに、仔猫のような「ニィ……」という声しかでなくなったルル。ユーモアのあるはなしです。「うおーっ」と「ニィ……」を、対比的に読みかたることで、笑いが生まれることでしょう。

     

「ニィ……」としか言えなくなったライオンのルルは、こうさぎのやさしさにふれ、かえるや草を食べて、こうさぎを食べたいと思わなくなりました。「ルル」という名前も人物を形象しています。

       

いつもの自分でなくなったとき、見えてくることがあります。

    

        ・・・

※『あめだまをたべたライオン』 今江祥智作、和田誠絵、フレーベル館 2008年  (2025/1/29)

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