ふるはしかずおの絵本ブログ3

『気のいい火山弾』-ベゴ石はなぜ怒らないのか

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宮沢賢治の「 気のいい火山弾 」が     

絵本になっています。

主人公は、

ベゴ石と 呼ばれる 火山弾です。

石ですので、動きません。

わたしの 好きな作品ですが、

絵本化は 無理だと 思っていました。

      ・・・

      ある 死火山の すそ野の かしわの木の かげに 、

      「 ベゴ 」というあだ名の 大きな黒い石が 

      永いことじいっと 座っていました。

      ・・・

ベゴ石は、   

たまごの 両はじを、少し ひらたくのばしたような 形。

ななめに 二本の帯のようなものが、  

からだを 巻いています。

そして、

 一ぺんも 怒ったことがない 人物です。

      ・・・

 稜( かど )のある石は、

このベゴ石を からかって 遊ぶのです。

そして、バカにするのです。

かしわの木は、 自分のせいの 高さに

うぬぼれています。

おみなえしは、 冬の到来に、

きもを つぶしてしまいました。

      ・・・

くうんくうんと 蚊が 飛んできます。

は、

「 ベゴ石の ごときは、何の やくにも たたない 」

と 馬鹿にします。

ベコ石の上の 苔は、

この悪口を聞いて 馬鹿にします。

      ・・・

    べゴ黒助、ベゴ黒助、

   黒助 どんどん、

   千年たっても、 黒助 どんどん、

   万年たっても、 黒助 どんどん

      ・・・

それでも、べゴ石は 怒りません。

ある日、

背の高い りっぱな四人の人たちが 来ました。

「 あ、 あった、 あった。  すてきだ。  実に いゝ 標本だね。  火山弾の 典型だ。」

「 こんな立派な   火山弾は、   大英博物館に    だってない ぜ。」

       ・・・

ベゴ石は

「 東京帝国大学校 地質学教室 」 まで

運ばれることに なったのです。

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からかわれ、バカにされても 怒らない

ベゴ石の こころには、 何があったのでしょうか。

       ・・・

ベゴ石は、なにも しませんでした。

そこにあるだけです。

しかし、 

ただ、そこに あるだけで、

みんなの役に たっていたのです。

かしわは、ベゴ石のかげで 成長することができました。

苔も、ベゴ石が じっとしていたからこそ、成長できたのです。

       ・・・

すべてのものには、無駄がありません。

それぞれの役割を 持っています。

もちつ もたれつの 相関関係 にあるのです。

       ・・・

また、

すべてのものは 変化 します。

そのような自然の理法を 

あるがままに受け入れる ベゴ石でした。

法華経を ふかく信仰した 賢治です。

このような考えを ベゴ石の生き方に こめたのです。

       ・・・・・

絵本化の 難しい作品に、

 田中清代さんは、みごとな絵でこたえました。

ベゴ石の人物像には 苦労されたのではないかと 想像します。

火山の場面と     

べゴ石の歌の画面は、とてもすてきです。

      ・・・

※ 『 気のいい 火山弾 』  宮沢賢治作、 田中清代絵、 ミキハウス  2010年

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