ふるはしかずおの絵本ブログ3

『マーシャと くま』-スリルがうまれるわけ

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ハラハラ ドキドキの絵本です。人物と読者の関係の仕掛がみごとです。

         ・・・

森の中で、迷ってしまった  

マーシャ。

くまの家に迷いこんでしまいました。

くまは、ここでずっと暮らすようにと、マーシャをおどします。

まわりは森で、

どっちへ行ったらよいか、 わかりません。道を教えてくれる人もいません。

マーシャは、どうしたら家に帰ることができるのでしょうか。

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     かんがえて、 かんがえて、

     マーシャは いいことを おもいつきました

          ・・・

マーシャは  

どのような計画をおもいついたのでしょうか。

マーシャは 知っているのに、

「わたし」( 読者 )は知らない という関係が、想像力を刺激します。

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マーシャは、

おじいさんとおばさんのところに、

おかしを持っていってあげたいとくまに頼みます。

でも、

くまは

「 おかしを およこし  わしがもって いってやろう 」と言います。

マーシャは、くまの その言葉をまっていたのでした。

でも、なぜ?

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マーシャは、おまんじゅうを作り、つづらのなかに入れました。
     ・・・

 とちゅうで つづらを あけたり しちゃだめよ。 

 かしのきに  のぼって  みはっているわ 

        ( この一言は、 おはなしの 伏線です。 )

    ( くまの驚きに リアリティを あたえます。)

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マーシャは、 くまを おもてに出し、

そのすきに、

つづらのなかに隠れました。

読者はマーシャと一蓮托生です。スリルと サスペンスの体験が生まれます。

           ・・・

村にむかう途中で、くまが言います。

        ・・・

 きりかぶに こしかけて、 まんじゅうを たべよう。

 すると、つづらの なかから、 マーシャが  いいました

       ・・・

  みえるわ みえるわ!

  きりかぶに こしかけちゃ いけないわ。

  おまんじゅうを たべちゃ いけないわ。

  もっていくのよ おばあさんに!

  もっていくのよ おじいさんに! 

      ・・・

歌うような調子のリズムがあります。

そして 息のつまる瞬間です。

「 間 」を おきましよう。

       ・・・ 

このあと、 くまは・・・。

やれやれ、 なんて  りこうなこだろう !  

よっぽど  たかいところに  のぼっているんだな !

         ( 「 かしのきに のぼって みはっているわ 」 

              と言ったことが ここで 活きました。 )

           ・・・ 

村にたどり 着いたくまは、

犬たちに追い払われて、森へにげていきました。

マーシャは、無事におばあさんとおじいさんのもとへ帰りました。

ふたりは、マーシャを だいて ほおずりすると  

おりこうさんと、いいました

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読者は、スリルを感じながらおはなしに参加していくことでしょう。

マーシャは知っているのに、 読者は 知らない、

くまは 知らないのに、 読者は 知っているという、

人物と読者の関係が読者のスリルを生みだす仕掛です

       ・・・

※ 『 マーシャと くま 』  E・ラチョフ絵、 M・ブラトフ再話  うちだりさこ訳  福音館書店  1963年  (2013/8/22)

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