ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 ぼく おかあさんのこと・・・ 』-おかあさんのこと キライって、本当?

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酒井駒子さんのすてきな絵本 『 ぼく おかあさんのこと・・・ 』 ( 文渓堂 )です。

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おかあさんのこと キライ 」と言う 子うさぎ。

でも、なぜでしょう。

その理由が おもしろい。

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だって ねぼすけ なんだもの。

日曜日のあさは いつまでも ねてる。

ドラマ ばっかり 見て

マンガ 見せてくれないし

すうぐ おこるし・・・

はやく はやく はやくしなさいって いうくせに

じぶんは ゆっくりしてる。

それから

園のお迎えだって いつも 遅いし。

おせんたく 忘れるから、

ぼくの くつした きのうも きょうも おんなじだし。

      ・・・

それから、

それから、

それから・・・

ぼくとは ケッコン できないって いうし。

     ・・・

語り手は 「 ぼく 」。

「 ぼく 」 が語り手ですので、

このように言う「 ぼく 」に、

読者( 子ども )が同化できるかどうかがカギです。

でも、

大人の読者は、「 ぼく 」 の 子どもらしい しぐさや 言い方に「 おかあさん」 の行動と表情に共感します。「 ぼく 」 と 「 おかあさん 」 の立場を 同時に体験するのです。

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おとうさんが描かれていませんので、もしかしたら母子家庭 ?

おかあさんは 毎日 働いている のでしょう。園のお迎えが遅いのは、 そのためかもしれません。日曜日はゆっくり したいのです。でも、 これは 大人の見方。

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  ぼくは、 もう こんな おかあさんと おわかれしよう。

  「 サヨナラ おかあさん!」

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ぼくが出ていった2つの画面がすばらしい。

おかあさんの複雑な顔の表情。

文のない沈黙の画面が、なんと多くのことを語っていることでしょう。

     ・・・

ドアがすこし開きました。

ああ どうしたの? わすれもの?

「 ん。 ボール わすれた。 もってくの。 あのね  おかあさん 」

なあに ?

「 ぼくと  またあえて  うれしい ? 」

「 うれしいとも ! 」

ふたりの 人物の行動、

しぐさ、

表情を、

絵はいきいきと伝えています。

ビスケット、 ボール、 ロボットのおもちゃ、 タンポポ、 くつしたなどの小道具も、意味を持って描かれています。子どもの日常がこまかく観察されています。そして、最後のページを見ますと、ぼくの靴下はちゃんと洗濯されています。

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『 ぼく  おかあさんのこと 』は、 おとな向けの絵本かもしれません。

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『 リコちゃんの おうち 』 ( 偕成社 )

『 よるくま 』 ( 偕成社 )

『 よるくま クリスマスのまえのよる 』 ( 白泉社 )

『 ロンパーちゃんと ふうせん 』 ( 白泉社 )

『 ゆきが やんだら 』 ( 学習研究社 ) などの作品もあります。

酒井駒子さんは、 注目の絵本作家です。

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 ※『 ぼく おかあさんのこと・・・ 』 酒井駒子作 文渓堂  2000年 (2013/9/27)

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