ふるはしかずおの絵本ブログ3

『12のつきのおくりもの 』- 読者の願いが実現する

スロバキアの民話です。継子いじめのおはなしです。

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昔、

あるところに、

ふたりの娘とくらしている やもめがいました。

 姉のホレーナは やもめのむすめ。

 妹のマルーシカは ままこでした。

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やもめと ホレーナは、

きれいなマルーシカが憎らしくて、

なんとか追い出そうとしました。

ある寒い冬の日、ホレーナがいいました。

マルーシカ、もりへ いって すみれを つんできてよ

やもめもいいました。

「すみれを みつけるまでは かえってきちゃ いけないよ」

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マルーシカは、泣きながら 森へ行きますが、

冬の森に「すみれ」があるはずがありません。

雪の中をあてもなく歩く マルーシカ。

倒れそうになりました。

そのとき、

むこうに ちらちらと燃える 赤い火が見えました。

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12にんの男のひとが、焚き火を囲んでいます。

1月から 12月までの 月の精たちでした。

冬の月は、おじいさん。

秋の月、夏の月と少しずつ若くなり、

春の月は、うつくしい若者でした。

マルーシカのはなしを聞いて、

いちばん若い3がつの精が、杖をふると、雪がとけ、春がきました。

すみれが、咲いています

「さあ、はやく おつみよ。いそいで」

すみれを持って帰ると、

お礼もいわずに、ふたりは命じます。

いちごを みつけるまでは かえってきちゃ いけないよ

こんどは、

6がつの精にたすけられます。

     

いちごを持って帰ると、

ひったるように、いちごを取り上げ、命じます。

「りんごを みつけるまでは かえってきちゃ いけないよ」

こんどは、

9月の精にたすけられ、真っ赤なりんごを持って帰ります。

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これを見た、欲の深いホレーナは、りんごを取りに出かけます。

しかし、

ホレーナの無礼な態度をみて、12がつの精は杖をふり、焚き火を消してしまいました。やもめも、森のなかの深い雪に うもれてしまいました。

残されたマルーシカは、

春がくると、

3月の精のような うつくしい若者と結婚して、幸せにくらしました。

こころ美しい者は救われる。また、神はすべてを見通されているという民話でした。読者はこうした教訓を学びます。

しかし、その前に、おはなしの中で、読者はマルーシカをなんとか助けたいと願います。読者もおはなしに参加します。読者の存在は民話においては欠くことのできない要素ですが、マルーシカにこころを寄せる読者の存在が『 12のつきの おくりもの 』の奇跡を起こします。その奇跡を不自然だとは思いません。読者はそれを願っています。読者もおはなしを創造します。

   

マルシャークの戯曲「森は生きている」(1943年)はこの話が元になっています。そして、マルーシカたちの民族衣装がうつくしい。

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※『 12のつきの おくりもの 』内田莉莎子再話、丸木俊絵、福音館書店 1973年  (2019/12/1)

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