ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 鹿姫ものがたり 』- 自然の再生を象徴する

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バルト海に面した国・ラトビア。ラトビアの民話をもとにした物語です。
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大きな森の中に、
ちいさな家があります。
ひとりで住む おじいさん
誰ともしゃべらず、つきあいもありません。
まっしろな鹿 も森に住んでいました。
ムクドリやセキレイたちは、このうつくしい鹿が大好きでした。
まっしろな鹿は、おじいさんとも仲良しでした。
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ところが、ある日、おそろしい猟師がやってきます。
「鹿さん はやく かくれて かくれて」
ムクドリやセキレイたちがさわぎます。
鹿はどんどん逃げます。けんめいに駆けだします。
にげる鹿を追う猟師。
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とうとう、おじいさんの小屋まで逃げてきます。
猟師の前にたちはだかる おじいさん。
「ならぬ。ならぬぞ」。
「この鹿は おれのものだ。じゃまだてするな!」
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おじいさんは、猟師とたたかいます。
しかし、おじいさんはたおれました。
「ああ おじいさん!」
鹿がさびました。
みると、
まっしろな鹿もたおれ、からだから血がながれています。
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しかし、なんということ
あたり、ぐんぐん変わり、
小屋は、りっぱなお城に、
まっしろな鹿は、お姫様に、
セキレイは、おつきの女たちに、
ムクドリは、めしつかいになったのです。
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おじいさんは猟師によって殺され、白い鹿は血を流して亡くなりました。しかし、その同じ場所にお城があらわれ、白い鹿はお姫様になります。死と再生の物語です。おはなしは、一般にものごとの喩えだと言えますが、『 鹿姫ものがたり 』の死と再生は、ラトビアの自然の再生、冬から春への季節の変化を象徴しているように思えます。
この絵本は、開拓120周年記念事業として 北海道東川町によって発刊 されました。日本語、英語、ラトビア語の文章が併記されています。絵本の発刊によって、東川町とラトビアの友好がさらに深まることを願います。また、三木卓さん文章に緩急のある流れを感じました。   
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※『 鹿姫ものがたり 』 三木 卓文、アグネセ・マティソーネ絵 かまくら春秋社 2015年
【 追記 】
ラトビアという国は全くと言ってよいほど知らない国でしたが、世界的ヴァイオリニストのギドン・クレーメル、指揮者のマリス・ヤンソンスを生んでいます。  (2019/2/7)

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