ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 ローザ 』-「ノー」ということの勇気

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ローザ・パークス(1913年~2005年)という女性がいました。ある事件がおこるまでは普通の主婦でした。彼女は、後に 公民権運動の母 と呼ばれるようになります。何があったのでしょうか?
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1955年のアメリカ。アラバマ州モンゴメリー。黒人差別の激しい時代でした。バスは、白人と黒人の座席が、前後でハッキリと分けられていました。その年、彼女は公営バスで「席をゆずれ」と横柄にせまる白人の運転手に言ったのでした。
 ノー  
 警察をよぶぞ! 
 おすきなように
 おばちゃん、席を立つつもりでいるんだろう?
 ノー
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ローザは、人種分離法違反の容疑で逮捕されました。バスは、当時貧しい黒人にとって大切な交通機関でしたが、黒人たちは抗議運動に立ち上がり、バスボイコットという社会運動を始めました。
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1956年11月13日。
最高裁判所は違憲判決を出し、公共交通機関における人種差別を禁止しました。ローザは、連邦議会から公民権運動のと呼ばれることになったのです。
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ローザの絵の背景は金色で装飾( 下の絵 )されています。画家のコリアーは、あとがきで次のように言っています。「ぼくにとってローザ・パークスは、ぼくたちが向かおうとするさまざまな道をエレガントな光で照らしてくれるあかるいシャンデリアです」。
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さまざまな状況の中で「ノー」を言うことの難しさは、今もあります。また、あらすじでは「公共交通機関における人種差別の禁止」が簡単に獲得されたように見えたかもしれませんが、ローザのように人種差別と戦った多くの人たちがいて獲得された権利でした。また、公民権法の制定(1964年)まで、まだ長い年月と闘いが必要でした。人種差別などの差別は今もなくなっていません。また、日本でもさまざまな差別があり他人事ではありません。この絵本は人権に関する意識をたかめる絵本です。そして、さまざまな人権を獲得し守ることの大切さや難しさを考えさせます。
コルデコット賞オナー賞受賞作品(2006年)です。
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※『 ローザ 』 ニッキ・ジョヴァンニ作、ブライアン・コリアー絵、さくま ゆみこ訳  光村教育図書 2007年 小学校高学年から
【 追 記 】
コリアーの絵のコラージュの意味については、以前『キング牧師の力づよいことば』のブログで紹介しています。ご覧いただけたら幸いです。  (2018/11/10)

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