ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 としょかん ライオン 』- ファンタジーの2項式

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もし、図書館にライオンが 現れたら・・・
「図書館」と「ライオン」の組み合わせがうみだすファンタジーです。
     ・・・
図書館員のマクビーさん が、
慌てて やってきます。
「ライオンがいるんです! としょかんに!」
「で、そのライオンは としょかんのきまりを まもらないんですか?」
と 女性館長の メリウェザーさん
「いえ、べつにそういうわけでは・・・・。」
「それなら そのままにしておきなさい。」
     ・・・
ライオン は、
歩きまわり、
目録カードの匂いを かいだり、
本棚に たてがみを こすりつけたりしています。
おはなしの時間が始まると、じっと聞いています。
おはなしがおわると、
ライオンは、
うおおおおおお お お お!
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「しずかにできないのなら、としょかんから でていっていただきます。それが きまりですから!」とメリウェザーさん。
「静かにするのなら、明日も来て良いんでしょ?」とおんなのこ。
「ええ、いいですとも」。
     ・・・   
次の日から、
ライオンは、図書館のおてつだいです。
棚のほこりを、しっぽで払い、
舌で手紙の封をしたり、
子どもたちを 背中にのせて、
高いところの本棚に 手が届くようにしてあげます。
    ・・・
ある日、
踏み台から落ちて、倒れてしまった メリウェザーさん。
「いたた……」
それを見た ライオンは、走りだし、
マクビーさんのところで、いちばん大きな声で 吠えました。
うおおおおおおおお お お お お お!
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マクビーさんは、倒れているメリウェザーさんを発見します。
でも、「図書館では走らない」「大声をださない」規則を破ってしまったライオン。
      ・・・
次の日から、
ライオンは やってきません。
おはなしの時間になっても 来ません。
マクビーさんは、車の下、植え込みのむこう、裏庭、ごみ置き場、木のうえをさがします。
しかたなく、図書館に戻ったとき、ライオンに出会いました。
「あのう・・・としょかんのきまりが かわったんですよ。」
「おおごえで ほえてはいけない。ただし、ちゃんとしたわけがあるときは べつ。つまりその、けがをしたともだちを たすけようとするときなど、ってことですけどね」と マクビーさん。
      ・・・
つぎの朝、
図書館にやってきた ライオン。子どもたちに大歓迎されるライオンです。
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イタリアの児童文学作家・ジャンニ・ロダーリ(1920年-1980年)に、ファンタジーの2項式があります。関係のない2つの言葉をむすびつけ、ファンタジックな物語をつくる創作の方法です。『 としょかんライオン 』はその典型的な作品のひとつです。「としょかん」「ライオン」から、このような楽しいおはなしがうまれました。(ロダーリ『 ファンタジーの文法-物語創作法入門 』ちくま文庫)
       
ファンタジーの2項式、また「もし、~ ならば」という虚構の方法は、教育の方法としても活用できるように思います。幼稚園、保育所、認定こども園の子どもたちは、みんなでこのファンタジーの2項式や「もし、~ ならば」の方法を使って、おもしろいおはなしを創作してほしいと思います。 
     ・・・
※『 としょかんライオン 』 ミシェル・ヌードセン作、ケビン・ホークス絵、福本友美子訳 岩崎書店 2007年
【 追 記 】
ジャンニ・ロダーリは、日本では『 チポリーノの冒険 』(杉浦明平訳、岩波少年文庫)の作者として知られています。彼の『 ファンタジーの文法-物語創作法入門 』(窪田富男訳、ちくま文庫)は、ファンタジーの2項式を含め、ファンタジーの創作方法を実践的に解説した本で、創作へのインスピレーションを与える刺激的な本です。また、絵本のライオンは、ニューヨーク公共図書館の正面にある2頭のライオン像がモデルのようです。  (2018/7/27)

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