ふるはしかずおの絵本ブログ3

ものごとの本質を感覚的につかむ-『ごつん ふわふわ』

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『 ごつん  ふわふわ 』は、

擬態語 や  擬音語で   できている 絵本です。

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さらさら / ぺたぺた / びしょ びょ / ごくん ごくん / ぎゅう ぎゅう / ぽき/ くしゅ くしゃ / べとべと / つるごつん / ふわふわ

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「 さらさら 」

「 べたべた 」

「 びしょ びしょ 」

「 ごくん ごくん 」 と いった 言葉から、

わたしたちは

ある情景

状態

動きを 思い描くことが できます。

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絵本は どのような 絵を つけているのでしょうか。

これらの言葉は、  ストーリーら しいものを 語っていません。

しかし、絵本の絵は、

公園で 遊んでいる おんなのこが、

雨に ふられて 「 びしょ びしょ 」 になって、

家に かえり、

絵を かき、

お風呂に はいって

眠るまでの 1日を  しっかりと 物語っています。

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絵本や 紙芝居には、これらの 感覚的な 言葉が多く使われています。これらを  総称して、 オノマトぺ ( 声喩 ) と いいます。オノマトペは、ものごとの様子を 感覚的に写しとったり、ものの音、音声などを まねてつくった 言葉ですから、音声による たとえ です。詩人の谷川俊太郎さんは、オノマトペを「 おとまねことば、  ありさまことば 」 と呼んでいます。日本語は、このオノマトペのたいへん多い言語です。あまりに多すぎて、 普通の辞書には入りきらないので、『 擬音語,  擬態語辞典 』( 角川書店 )という特別な辞書があるほどです。

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松居直さんは、言っています。

「 こうした 音声の 豊かさを伴った言葉が、  言葉に 対する 乳幼児の 耳の感覚や 語感を 養うのではないだろうか」  『絵本の時代に』

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また、これを違った角度から、谷川俊太郎さんは、 次のように言っています。

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「それら ( オノマトペのこと ) によって、 幼いころから、 物の質感や働き、 鳥獣の鳴き声、  人間の 心理などに 対する 繊細な感覚を育てることは、  大切なことだと思います。   たとえば、  笑いの表現ひとつをとっても、

〈 にたり 〉

〈 にんまり 〉

〈 にっこり 〉 は、

それぞれ 笑う 人間の 内心の ちがいを 見事に ひきだしています。」

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〈 にたり 〉 と わらう。

〈 にんまり 〉 と わらう。

〈 にっこり 〉 と わらう。

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わたしたちは、これらの人物の 内心のちがいを、理屈抜きで 理解できます。オノマトペは、このように笑う人物の 本質を、ずばりと つかみ出しています。対象をつかみだすオノマトペは、ものごとや「 人間の心理などに対する繊細な感覚 」を育てます。そして、日本人としての感覚、ものの見方をつくるのです。

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※『 ごつん  ふわふわ 』  谷川俊太郎文、なかのまさたか絵 福音館書店  1977年

【 追 記 】

池上嘉彦さんの 『ふしぎなことば ことばのふしぎ』 によりますと、エチオピア語に「 レメ レメ 」という言葉があるそうです。草木が、青々としげっている様子をあらわすオノマトペです。この言葉から、私たちがそれを連想するのは、まったく 不可能なことです。しかし、エチオピアの人たちは、この「 レメ レメ 」から、 草木の青々とした感じをイメージしているのです。  (2013/8/6)

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