ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 ここが 家だ 』- 「どうして わすれられようか」

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水爆を被爆した、第五福竜丸事件(1954年)をつたえます。
ベン・シャーンの絵に、アーサー・ビナードが文をつけました。
     ・・・
1954年1月22日 焼津。
第五福竜丸(23人乗船)は、マグロを追って 海にでました。
東へ、
南へ、
また東へ。
4000キロをこえて、ミッドウェー島を 通りすぎました。
     ・・・
2月7日 マグロ漁を はじめます。
さらに、南西へ 2000キロ。
マーシャル諸島の海で、
マグロの群れにであい、寝るまもなく、漁をつづける 
第五福竜丸。
     
3月1日の 夜あけまえ・・・
いきなり 西の空が まっ赤に もえた。
「太陽がのぼるぞぉー!」と ひとりが さけんだ。
西の空の 火の玉は 雲よりも 高く あがっていた。 

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ドドドーーン!
空から 冬の吹雪のように 白いものが ふってきました。
何時間も。( 珊瑚かなにかの 燃えた 灰 )
水爆です。
     ・・・
被爆した 23人。
気持ちがわるくなり、頭痛、めまい、下痢。
できものができ、髪の毛が 抜けはじめます。3月14日早朝 焼津に 帰港。23人は すぐに入院。
しかし、無線長の 久保山愛吉さんは 8月に 放射能病が きゅうに悪くなりました。
「原水爆の 被害者は わたしを 最後にしてほしい」と言って、
9月23日 
久保山さんは 亡くなりました。
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ビナードさんは 書きました。
     
「久保山さんのことを わすれない」と ひとびとは いった。
けれど わすれるのを じっと まっている ひとたちがいる。

     
でも、
どうして わすれられようか。
畑は おぼえている。
波は おぼえている。
ひとびとも わすれやしない
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アメリカの画家のベン・シャーン(1898-1969)が描いた、「第五福竜丸」の連作絵画が載せられています。文章は、日本で活躍する詩人のアーサー・ビナードです。簡潔で力強い常体の散文です。
水爆に被爆した第五福竜丸のことをはじめ、いつまでも忘れてはならないことがあります。 東日本大震災で亡くなった方々のこと……も。
     ・・・
※『 ここが 家だ 』 ベン・シャーン絵、アーサー・ビナード構成・文 集英社 2006年
   
【 追 記 】
「落ちてきたら/今度は/もっと高く/もっともっと高く/何度でも/打ち上げよう/美しい/願いごとのように」
     
黒田三郎の詩「紙風船」です。「紙風船」という日常性のなかに「美しい/願いごと」という非日常性を見いだしています。また、それは、何度でも空高くうちあげないと落ちてきてしまうものです。この絵本の出版の意義を考えました。   (2017/4/27)

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