ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 かにの しょうばい 』- 新美南吉のユーモアあふれる絵本

99

「ごんぎつね」の作家、新美南吉の絵本です。
      ・・・ 
かにが、床屋を はじめました。
でも、ひとりもお客さんが やってきません。
かには、海に いきました。
      ・・・
たこが 昼寝を しています。
「とこやですが、ごようは ありませんか。」
「よく ごらんよ。わたしの あたまに けが あるか どうか。」
けは ひとすじも なく、つるりんこで ありました。(笑)
      ・・・
かには、そこで、山へ いきました。
たぬきが 昼寝を していました。
「とこやですが ごようは ありませんか。」
「よろしい、かってもらおう。」
でも、いたずらずきな たぬきは言います。
「あとで、わたしの おとうさんの けも かってもらいたいのさ。」
「おやすいことです。」
ちょっきん、ちょっきん、ちょっきん。毛むくじゃらの たぬき。
仕事は、なかなか はかどりません。
078  
三日かかって、やっと おわりました。
「じゃ、やくそくだから、わたしの おとうさんの けも かってくれたまえ。」
「どのくらい おおきなかたですか。」
「あの やまくらい あるかね。」
      ・・・
そこで、
かには、じぶんの子どもたちを みんな 床屋に しました。
子どもばかりか、
まごも ひまごも、みんな 床屋に しました。
だから、今でも、小さなかにでさえ、ちゃんと はさみをもっています。
232    
ユーモアあふれる作品です。蟹は、はじめから自分のはさみを持っているのに、髪を切るはさみと櫛を手にしています。また、頭がツルツルのたこに声をかけるなんて、笑ってしまいました。たぬきの毛をかるのに三日もかかります。そして、たぬきに無理難題をおしつけられたとき、じぶんの子ども、孫、ひ孫をみんな床屋にするのも面白いところです。山口マオさんの版画は、この場面を上のように描きました。蟹たちは生き生きとしていますが、なんとなく笑えます。
新美南吉にこんな作品があるんですね。この絵本で初めて知りました。
     ・・・
※『 かにの しょうばい 』 新美 南吉作、山口 マオ絵、鈴木出版  2012年 (2017/3/28)

SHARE