ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 おさるが ふねを かきました 』- まどさんの哲学がみえる詩

ふふふ
まど・みちおさんの 詩の絵本です。
東貞美さんが、絵をつけています。
タイトルの「 おさるが ふねをかきました 」の詩を 引用しましょう。
      ・・・
 ふねでも かいて みましょうと
 おさるが ふねを かきました
    
 けむりを もこもこ はかそうと
 えんとつ いっぽん たてました
   
 なんだか すこし さみしいと
 しっぽも いっぽん つけました
  
 ほんとに じょうずに かけたなと
 さかだち いっかい やりました

    ・・・
せっかく船を 描いたのに、「 なんだか すこし さびしい 」と思って 自分に似せて、しっぽまで つけてしまいました。いらないことまで してしまう おさるです。 ( さるですからね。)
そして、上手に描けたと思って 逆立ちまで しているのです。
語り手のことばには、「さるだからね」「しかたがないな」という優しいこころを感じます。でも、この詩を書いた作者(まど・みちお)には、皮肉なこころや風刺の精神を感じます。わたしたちも、おさると同じことを しているかもしれません。この詩の外側に、そのように見ている作者がいます。
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他にも、すてきな詩が ならんでいます。
「いちばんぼし」
「うさぎ」
「つけもののおもし」
「ごはんを もぐもぐ」
「アリくん」
「タンポポ」
「キリン」
「チョウチョウ」
「にじ」
「ミミズ」
     ・・・
どれも 私の好きな詩ですが、特に「 いちばんぼし 」「 つけものの おもし」が面白いと思いました。
     
  いちばんぼしが でたうちゅうの目のようだ (前連) 
  ああうちゅうがぼくを みている      (後連)
     
宇宙に 見られている ぼく。でも、ぼくも、一番星(宇宙)を 見ているのです。ぼくは、広大な宇宙と響き合い対等の存在です。ぼくが、なんとおおきく感じられることでしょうか。
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「 つけものの おもし」の詩は、
「 つけものの おもしは / あれは なに してるんだ 」から始まり、擬人法、反復法、対句的表現がつづき、「 つけものの おもしは / あれは なんだ 」で終わます。
         ・・・                                                              ところで、最後の八連(「 つけものの おもしは / あれは なんだ 」)は、「 つけものの おもし 」の存在意義を 問うています。なにもしていない(ように見える)「 つけものの おもし 」。じっとしている「 つけものの おもし 」。じっとしているから、何かをしている「 つけものの おもし 」。存在自体(そこにあること)が、役にたっているのです
七連にある「 おじいのようで / おばあのようで 」が、そこにいる(ある)ことの意味・価値を教えています。おじいとおばあは、「 つけものの おもし 」です。
     ・・・
※『 おさるが ふねをかきました 』 まど・みちお詩、東 貞美絵、 国土社 1982年  (2017/11/16)

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