ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 うつくしい絵 』-うつくしい(美)って なにか

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この絵本がとりあげる「うつくしい絵」とは。
      
レオナルド・ダ・ビンチ -「モナリザ」、「聖アンナと聖母子」
ゴッホ - 「アルルのはね橋」「かりいれ」
      「17歳のアルマン・ルーラン」「糸杉」「ひまわり」
レーピン -「ボルガの舟引き」「おもいがけなく」
葛飾北斎 -「神奈川沖浪裏」「凱風快晴」「北斎漫画」
ピカソ - 「アイロンをかける女」「貧しき食事」「ゲルニカ」
      
これらの名作から、
レーピンの「おもいがけなく」(下の絵)を見てみましょう。
薄汚い男が、 
うちのなかに 入ります。
女の子は こわごわ。
男の子は 喜びと なつかしさに 声をあげます。
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男と向きあっている ひとは 母親。
ピアノを ひいていた 奥さん。
訝しげに 見ている 召使いの女性。
男は ながい間 収監されていたのです。
ロシアの皇帝に 反対し、背いたために。
この絵について、かこさんは、こう書いています。
      
レーピンは、ふこうな ひとを はげまし、まじめで ゆうきのある ひとを たたえながら、ひとりひとりの さまざまな こまかな 心のうごきまでを えがきました。それが、レーピンの 絵を、うつくしい すばらしいものに しているのです。
      

下の絵は、
葛飾北斎の有名な「神奈川沖浪裏」です。
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視点は浪の上にあります。その浪は、富士山よりも高く描かれています。船を飲みこもうとする意思をもっているかのようです。そして、富士山を断ち切るように、小さな船が描かれています。神聖な富士と卑俗な船。ふたつをこのように組み合わせた構図に、芸術家としての北斎の高い精神 を感じます。美( 面白さ )は、作者によって意味づけられたところに 生まれます。
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また、美は、見る者によって見い出され、創造されるものです。画家の心とうつくしい表現を、(私が)感じ・考えるとき、それが、うつくしい絵として 私の前にあらわれます。たとえて言えば、光とものによって生まれる影のようです。美は、私(光)と作品(もの)の関係性の中にうまれるもの、主観・客観の関係の中にうまれるもの と考えます。また、芸術作品は、光のあたっていないダイヤモンドに似ています。
美については、こうした相関説をはじめ、さまざまな考えがありますが、美とは何か、うつくしいとは何かを 考えさせる絵本でした。
      
でも、その前に、絵の見方をおしえる 絵画入門の絵本です。かこさんの芸術観が見えます。
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※『 うつくしい絵 』  かこ さとし作・絵 偕成社 1974年  (2017/8/22)

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