ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 ありこの おつかい 』- 「行くと帰る」の物語の基本的構造

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子どもに 読んであげたい  絵本です。
でも、ちょっぴり こわいかな。
     ・・・
あり( 蟻 )のありこの おかあさんが ありこに お使いを頼みます。
道草を しないこと。こわいものに 気をつけること。
     ・・・
でも、ありこは 
あっちへ行き、こっちへ行き、のろのろ。
途中、木の根元の 青いつるくさを ひっぱると・・・
それは かまきり。
かまきりの きりお です。
     ・・・
怒ったきりおは、
「ごめんなさい、ごめんなさい」とあやまる ありこを 追いかけ
ぺろり。
すると、おなかの なかから
たべるなんて- ばかあ!
「うるさい。だまれ!」 
きりおは おなかの中の ありこと 喧嘩をしながら、歩いていきました。
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むくどりの むくすけが やってきます。
「 ばかあ 」と言われ 怒りだす むくすけ。
きりおは びっくりして
「 ぼく、あなたを ばかだなんて いいませんよ!」
でも、「 ばかあ、ばかあ! 」という声が 聞こえます。
それは おなかの中の ありこの声。
怒った むくどりの むくすけは きりおを 飲みこんでしまいました。
こんどは、むくすけの おなかの中から、
ばかあ、ばかあ!
とんちきめ! 」の声がします。
     ・・・
くりかえしです。
つぎは、やまねこの みゅう
むくどりの むくすけを のみこむと、
おなかの中から 聞こえる声は、
ばかあ、ばかあ!
とんちきめ!
わるものお!
     ・・・
つぎは、くまの くまきち
ねこの みゅうを のみこむと、
おなかの中から 聞こえる声は、「 くるしい!」「 ばかあ、ばかあ!」「 とんちきめ!」「 わるものお!」
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くまきちの おかあさんは、
悪口をいう くまきちの おしりを ぽんぽん たたきました。
すると、
すぽーん!  みゅーが とびだしてきます
みゅーの おしりを ぽんぽん たたくと、
すぼん!  むくどりの むくすけ
むくすけを たたくと、
すぽ!  かまきりの きりお
かまきりの きりおを たたくと、
ありの ありこが とびだしました
 ( あ、よかった )
     ・・・
ありこが あやまります。
くまきちの おかあさんは、いいます。
ごちそうをたべて、みんなで なかなおりして ちょうだい。」
きょうは くまの くまきちの たんじょう日です。
ごちそうを たべた ありこは、
くまの おかあさんの 背中に のって、うちへ 帰ります。
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この絵本は、シンプルですが、「 行くと 帰る 」という物語の構造をもっています。絵本の骨格が しっかりとしています。この枠組みは、物語の基本的なパターンであると瀬田貞二さんは言っています(『幼い子の文学』)。また、リズムのある文章と みごとな くりかえしの表現です。おなかの中から、「ばかあ!」「とんちき!」「わるものお!」という悪口が聞こえてくるのも、おもしろい。みんな、飲みこまれますが、食べられたというより、お腹の中にはいったという感じです。でも、こわい ?
また、やわらかいタッチと淡くやさしい色遣いの絵は、中川 宗弥さん。飲みこまれた様子を 同心円で表現( 上の絵 )しています。 すこし怖くて、ユーモアも感じます。奥様は『 ぐりとぐら 』の 中川李枝子さんです。
     ・・・
※『ありこのおつかい』 石井 桃子作、中川 宗弥絵、 福音館書店 1968年 (20117/10/19)

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