ふるはしかずおの絵本ブログ3

『根っこの こどもたち 目をさます』- 春はもうすぐです

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ドイツの古典的な絵本(1906年)、メルヘンです。
根っこの こどもたちを通して、春を迎える喜び、季節の移り変わりを描きます。 
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春が、ゆっくり 近づいて来る頃、
地面の下で、土のおかあさんが、根っこの 子どもたちを 起こします。
根っこの こどもたちは、春支度を はじめます。
おんなのこは、春の服を じょうずに ぬってきました。
あかい
きいろ
あおい
しろい
オレンジ
すみれ色
の布で。
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おとこのこは 眠っている虫たちを 起こします。
カブト虫、テントウ虫、バッタ、ハチ、ホタル、コガネ虫たち。
虫たちの からだを洗い、うつくしい春の色を 塗ってあげます。   
う1
根っこの こどもたちは、花のこどもに 変身。
マツユキソウ
タンポポ
スイセン
ヒナギク
サクラソウ

     ・・・
スズランスミレは 木のかげで はずかしそうに咲いています。
キノコも顔をだし、カタツムリも春がきたな、と喜んでいます。
     ・・・
夏。
そして秋。
つめたい風が 吹きはじめます。
木の葉は、赤く、黄色く、金色、茶色に。
そして、はらはら 地面に落ちていきます。
花のこどもたちは、土のおかあさんのところへ 走って帰ります。
さむい冬
根っこの こどもたちは、ねむり、次の年の 春を待つのです。
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たくさん出てきた花と虫。春を心待ちにする人物たちです。自然を擬人化して描いたオルファース(1881-1916)の絵が とても魅力的です。イギリスの絵本作家 ケイト・グリーナウェイ(1846-1901)と比べて見たくなります。
   
おはなしは、淡々と語られます。また、絵本が 想定する読者は、きびしい冬を知っている ドイツの子どもたちです。絵本を読む前に、読者(子ども)は、この想定される読者になる必要があるように思います。「さむい さむいとき、花や虫たちはどうしているかな。あたたかくなったら? あたたかな春が来た時の おはなしですよ」。このような言葉かけが、おはなしに読者を引きこむ手立てとして、読む前に必要かもしれません。
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※『根っこの こどもたち 目をさます』 ヘレン・ディーン・フィッシュ作、ジビレ・フォン・オルファース絵、石井桃子訳、童話館出版 2003年 (2017/3/17)

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