ふるはしかずおの絵本ブログ3

『月夜のみみずく』- 満月の夜の冷たく張りつめた空気感に満たされて

満月が、のぼってきます。

表紙以外に月は描かれていません。しかし、おはなしの舞台は、月の光にずっと照らされています。「わたし」(一人称)の視点から描かれます。

    ・・・

雪、

夜、

満月。

遠くに響く汽車の汽笛。

 (読者の五感を刺激します)

とうさんとわたし(おんなのこ)は、みみずく探しに森に出かけます。

こおった雪、

ふたりの影

月の光で とうさんの顔は、銀色のお面をつけたみたいです。

 ほうーほう ほ・ほ・ほ ほーーーう

とうさんは、ワシミミズクによびかけます。

 ほうーほう ほ・ほ・ほ ほーーーう

でも、返事がありません。

肩をすくめる とうさん。

     ・・・

森の中、

木の影は まっくろ。

空き地に出た ふたり。

雪の白さといったら、ミルクよりずっとずっと白い。

 ほうーほう ほ・ほ・ほ ほーーーう

 ほうーほう ほ・ほ・ほ ほーーーう

そのとき、

やまびこのような返事。

木の間をくぐりぬけ、

 ほうーほう ほ・ほ・ほ ほーーーう

とうさんとみみずくは、おしゃべりしているみたい。

みみずくの声が近くなる。

明かりをつけると、

木の枝に止ろうとする みみずくがいる。

見つめあう わたしたち。

1分間かしら、

3分間かしら。

    ・・・

やがて みみずくは、森の奥に帰っていきました。

「わたしたちも うちへかえろう」

わたしは 影みたいに しんみり歩いてかえります。

   

 みみずくに あうときは

 おしゃべりは いらないの

 さむさも へっちらなの

 あいたいな あえるかなって

 わくわくするのが すてきなの-

 それが とうさんに おそわったこと

満月に照らされた澄み切った雪景色、夜の静寂、冷たくはりつめた空気感。これらを十分に表現したすばらしい絵です。

森の中を行く とうさんと わたし。少女のわたしの視点から語られますので、わたしの胸の鼓動がひしひしと伝わります。とうさんに対するにわたしの尊敬、自然への畏敬が感じられます。みみずくに会いに行くという、心おどる体験が、「わたし」だけでなく、読者の「わたし」を共感をよび「わたしたち」のものになります。

1988年度コルデコット賞受賞作品です。

     ・・・

※『 月夜の みみずく 』 ヨーレン詩、ショーエンヘール絵、工藤直子訳、偕成社  1989年  (2019/12/4)

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