ふるはしかずおの絵本ブログ3

『フレデリック』- ひかり、いろ、ことばをあつめる

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牧場の石垣のなかに住む、5ひきの のねずみのおはなし
詩人とは何か、
芸術とは何かを 語っています。
      ・・・
冬にむけて、
木の実などをあつめる のねずみたち
でも、フレデリックだけは、じっとして動こうとしません。
フレデリックは みんなに言います。
おひさまの ひかり を あつめているんだ。」
いろ を あつめてるのさ。冬は灰色だからね」
ことば を あつめてるんだ。・・・話のたねもつきてしまうから。」
あぬ
冬が来て、
すこしずつ食料も尽きていきます。
「きみがあつめたたものはどうなったんだい」
「めをつむってごらん」
フレデリックが集めていたもの。
ひかり
いろ
ことば
つきることなく、生まれます。
こころが温かくなる ねずみたち。
豊かな想像力が、生きる力となります。
おどろいたなあ、フレデリック。きみって しじんじゃ ないか!
ふふ      ・・・      
『フレデリック』に関係があるような、関係のないような追記です。
ルポルタージュ作家・上野英信さんに『地の底の笑い話』( 岩波新書 1967年 )という本があります。筑豊炭鉱で働く者についての記録文学ですが、そのなかでスカブラという人物がいたことを紹介しています。バカ話をしたりきわどい話などをして、まわりの鉱夫を楽しませる役まわりの人物です。かれは鉱夫としては働きませんが、仲間たちから「スカちゃん」と呼ばれ愛されていました。かれが休んだときは、時間が凍結したように長く感じられたということです。そのスカブラも合理化によって炭鉱から追いはらわれました。
「いまの炭鉱にはスカブラもおらんごとなってしもうた。坑内に下っても、全然面白うなか。スカブラのおらん炭鉱なんち、まったく意味なかよ」という炭鉱夫の言葉があります。働く現場が厳しいものであるからこそ、笑いがいきています。
『フレデリック』を読み直し「スカブラ」と呼ばれる人が筑豊炭鉱にいた話を思い出しました。また、「無用の用」について考えました。
      ・・・
※『フレデリック』 レオ・レオニ作・絵、谷川 俊太郎訳 好学社 1969年  (2018/9/10)

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