ふるはしかずおの絵本ブログ3

『チムとゆうかんなせんちょうさん』- ひとつの経験をするチム

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『チムとゆうかんなせんちょうさん』の原作は1936年、日本初版は1963年。この絵本は2001年の新版です。
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船乗りになりたい、

チム。
でも、両親からちいさすぎると笑われます。
ある日、ボートに乗せてもらい、大きな汽船に乗り込みました。チムは、こっそり隠れました。でも、沖にでた船の中で、見つかってしまいました。
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チムは、船員として 働き始めます。
甲板そうじ、
ジャガイモむき、
はしりづかい、
舵手の代役、
船員のボタンを ぬいつける仕事。
チムは、みんなから可愛がられるようになりました。
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嵐がやってきました。
大きなうねりに、気持ちがわるい チム。
海に、こなければよかったと思う チム。
真夜中、

船は、岩にぶつかり、

横倒しになりました。
ふねが しずむぞ。ボートへうつれ、ボートへ
ところが、

みんなは チムのことをすっかり忘れています。
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船に残ったのは、

船長とチム。
さあ、ぼうず、こっちへ こい。なくんじゃない。いさましくしろよ」。
ふたりは、手を握り、最後の時を待ちました。

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いよいよ、波にのまれようとしたとき、

チムが叫びます。

「ああ、たすかった。たすかったよ!」

嵐のなか、

きゅうめいボートが、やって来ました。
二人が救出されたとき、

船は、波間に沈みました。

チムは、おとうさんとおかあさんのもとに帰ります。

船長は、チムの両親に、冒険のはなしをすっかり聞かせました。
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冒険チムの達成感や満足感は、かれの海への憧れをさらに強めたことでしょう。嵐がきて船が難破する後半は、チムたちがどうなるのか心配になります。ワクワクドキドキ感があります。

主人公は、海にあこがれるチムかもしれませんが、勇敢な船長さんのおはなしでもあるように思います。大人の読者は、船長の言葉や勇敢な行動に惹かれます。また、チムをとりまく人物たちに存在感を感じます。

     

主人公はチムなのでしょうか? 船長なのでしょうか? それを客観的に決めることはできないように思います。「読者にとって」という条件を入れて主人公が決まります。

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※『 チムと ゆうかんなせんちょうさん 』 エドワード・アーディゾーニ作・絵、瀬田貞二訳、福音館書店  2001年

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