ふるはしかずおの絵本ブログ3

『キンコンカンせんそう』- ユーモアで伝える反戦の思想

『チポリーの冒険』のジャンニ・ロダーリ(1920-1980)とぺフの絵本、反戦を伝える絵本です。訳者は日本で活躍するアメリカの詩人・アーサー・ビナードです。

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そのころは みんな せんそうを やっていた

 (「そのころ?」って、じゃあ、いまは戦争がないのかな?)

 (どうしてなくなったのでしょうか?)

 (読者の興味を引くしかけです)

   

おそろしい せんそうで、へいたいたちは いっぱい ころされた。

ひるも よるも てっぽうや たいほうを うちあい、ばたばたと しんでいった。

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そのうち、金属が足りなくなった。

「せんしゃの ぶひんが ない!」

ボンボーネ・バクレッツォーネ・フニャラロッシー大将が命令した。

「ベルというベル、かねというかねを ぜんぶ あつめてこい!」 

国中の教会や学校から、

「でっかい たいほう」を作るため、鉄や青銅が集められた。

巨大な大砲ができあがった。

「てきの やつらは ぜんめつだ!」

ボンボーネ・バクレッツォーネ・フニャラロッシー大将は にんまりした。

「うて!」

すると・・・

ふしぎな音が響きだした。

 (響きだした?)

    ・・・

キン! コン! カン!

国中にこだました。

キン! コン! カン!

      ・・・

こんどは、むこうから、あかるい たのしげな ねいろが ながれてきた。

キン! コン! カン!

敵のバンバーネ・ヘキラッツァーネ・ホニャラロッソー大将も、おなじものを作っていた。でも、大砲の音は・・・

キン! コン! カン!

      ・・・

兵隊たちは、武器を捨て、走り出し、踊りだし、声をかけあった。

「かねが なるぞ!」

「いい ねいろじゃ!」

「おまつりだ!」

「へいわの はじまりだ!」

「おめでとう!」

ふたりの大将は逃げ出した。でも、どこまで行っても,「キン! コン! カン!」は,ずっと追いかけていったのだ。

        ・・・

「キン! コン! カン!」の音が戦争反対と聞こえます。兵士たちも「いい ねいろじゃ!」「おまつりだ!」「へいわの はじまりだ!」と言っています。走り出し、踊りだし、声をかけあう兵士たち。ユーモアがあります。

        

絵本のなかに、国中の教会や学校から「たいほう」を作るため鉄や青銅が集められたとあります。金属の供出は戦争中の日本にもありました。

 

「金属類回収令(昭和18年8月12日勅令第667号)は日中戦争から太平洋戦争にかけて戦局の激化と物資(武器生産に必要な金属資源)の不足を補うため、官民所有の金属類回収を行う目的で制定された日本の勅令」( ウィキペディア)

 

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※『キンコンカンせんそう』 ジャンニ・ロダーリ作、ぺフ絵、アーサー・ビナード訳、講談社 2010年 (2022/2/25)

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