ふるはしかずおの絵本ブログ3

『まゆとおに』- おにの表情と仕草が笑えます

やまんばの娘、まゆの大活躍です。

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ある日、まゆは、おにに会いました。

お腹をすかしたおには、まゆを煮て食べようとします。

「じょうちゃん、ちっと うちに あそびに こないかね?」

「うん、いく!」

  

おには、お湯を沸かします。

薪を集めてくれ、とおにが言うと、

まゆは、松の木を引っこ抜いて、薪をつくります。

かまどの石を集めてくれ、といわれると、

おにの岩屋のかべをけっとばし、おおきな岩を並べました。

 (やまんばの娘ですから)

おには、大鍋を火にかけます。

「どうして、おゆを わかすの?」

「さむい ひは あつい ふろに かぎるからさ」

鍋の湯は ぐつぐつと 煮え立ちました。

「じょうちゃん、あつい おふろに おはいり」

    ・・

「しんせつな ひとには、いつも、れいぎただしくしなさい」

まゆは、 おかあさんの言葉を思い出しました。

そこで、

まゆは言いました。

おさきに どうぞ

      

まゆは、おにをかかえ、ざぶんと鍋にほうりこんだのです。

ぎゃおー

まゆは、泣いているおにを背負い、おかあさんのところへはこびます。おかあさんは、おにのおしりに膏薬をはってくれました。おにぎりとだいこんじるをご馳走しました。

まゆとおには、大の仲良しになりましたとさ。

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痛快なストーリーと超人的なまゆにびっくりです。しかし、明るく元気いっぱいで、優しく、愛らしく、礼儀正しいまゆです。おには、怖いところもありますが、すこし間が抜けていて憎めない役回りを演じています。
  
文章を補い発展させている降矢ななさんの絵も、この絵本の魅力です。動きのおおきなダイナミックな絵もあれば、笑えるような絵もあります。まゆとおにの表情と仕草のコントラストが読者を楽しませます。

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※『まゆとおに』 富安陽子作、降矢なな絵、福音館書店 2004年  (2022/5/30)

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