ふるはしかずおの絵本ブログ3

『はじまりの日』-ボブ・ディランの曲が絵本になる

ボブ・ディランの曲「Forever Young」(1974)の絵本です。

翻訳は詩人のアーサー・ビナードです。ディランの詩(ビナードの訳詩)の全部を描くことはできませんので、印象的な詩句を書きだします。

    

      ・・・

 星空へ のぼる

 はしごを 見つけますように

     ・・・
 このひろい 世界が
 きみの目に 光りますように
      ・・・

 流されることなく
 流れを つくりますように

      ・・・

 きみの心のうたが みんなにひびきますように
 毎日がきみの はじまりの日
 きょうもあしたも 
 あたらしいきみの はじまりの日

「Forever Young」は、ディランが息子のためにつくった歌だと言われていますが、未来をひらくための、すべての人に向けたメッセージです。力強い詩と曲です。 アーサー・ビナードは 「forever young 」を「いつまでも若く」ではなく「はじまりの日」と訳しました。そのことで東日本大震災を経験した私たちにとって、さらに深い意味をもつ曲になったように思います。

 

絵はポール・ロジャースです。

かれはボブ・ディランに影響を与えた人物、場所、本、出来事を絵の中に描きました。絵本に描かれているプラカードには「HOW MANY?」とありました。ウディ・ガスリー、ピート・シーガー、ジョーン・バエズ、詩人アレン・ギンズバーグ、画家ベン・シャーン、ビートルズ、キング牧師、ジャズミュージシャンのセロニアス・モンク、アインシュタイン・・・も登場しています。

  

童話「気のいい火山弾」のなかで、宮沢賢治は、岩石標本を探しに来た学者が「気のいい火山弾」を見つけた時、彼にこう言わせています。「もうこれ丈けでも今度の旅行は沢山だよ」。

私もこれらの人の名前と絵を見つけた時、そのような気持ちになりました。巻末に絵についての解説があります。

ご存じのように、 ボブ・ディランは2017年ノーベル文学賞を受賞しました。

       ・・・

※『はじまりの日』 ボブ・ディラン作、ポール・ロジャース絵、アーサー・ビナード訳、岩崎書店 2010年

 

【 追 記 】

プラカードにある「HOW MANY?」 は、言うまでもありませんが、「風に吹かれて」の歌に繰り返され詩句です。

How many roads must a man walk down

Before you call him a man ?

How many seas must a white dove sail

Before she sleeps in the sand ?

How many times must the cannon balls fly

Before they’re forever banned ? ・・・

                   (2021/3/31)

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