ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ねずみじょうど』- 心は見えないが形に現れる

文は瀬田貞二、絵は「原爆の図」の丸木位里です。「ねずみじょうど」でコンビを組ました。

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むかし、あるところ、

びんぼうなじいさんとばあさんが住んでいました。

じいさんは、柴刈りに。

ばあさんが、そばもちをつくります。

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じいさんが、そばもちを食べようとすると、

そばもちがころころと転げ落ち、小さな穴へ入ってしまいました。

「はあ、しかたねえなあ」とじいさん。

「けっこうな ごちそうを ありがとさん」と ねずみがこたえます。

「ちょっくら うちへ よって くだされや」

じいさんは、

ねずみの尻尾につかまり、

ねずみのお屋敷に案内され、

歌やおどりの歓待をうけました。

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ねずみは、

そばもちのお礼に、

つきたての餅と黄金を、ばあさんに持っていくようにと差し出しだしました。

 

ねずみのじょうど ねこさえ いなけりゃ ねずみのほうねん しゃきしゃき

黄金のしゃらしゃらと鳴る音を聞いた、隣のめくされじいさん。

今度は俺もと、そばもちを持って山へ出かけた。そばもちを落とし、穴に押しこむ。

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ねずみのしっぽにつかまり、「はやく いけ」とじいさんは急きたてる。

めくされじいさんも、座敷に通されるが、黄金がほしくて、

がまんできずに、

 にぁーお

と猫の鳴きまねをした。

「ねこが きた!」

明かりが消え、あとは真っ暗。

めくされじいさんは、帰り道が分からず、とうとうモグラになったというおはなし。

 

 とっぴん はらいの ぴい。

「ねずみのじょうど ねこさえ いなけりゃ・・・」のフレーズが形をかえて2回繰り返されます。それが、おはなしの音感的な要素になっています。後半の「めくされじいさん」の場面は少し不気味な感じです。「めくされ」とは人を罵って言う言葉ですが、作中のじいさんが使っているわけではありません。語り手がこの言葉を使っています。

 

人の心は見えないが、形(言動)に現れる。

 

語り手はふたりの言動を対比して、はっきりとした倫理観を示しました。 語り手は昔話を伝えてきた民衆の心を代弁する人物です。

 

丸木位里さんの絵は墨絵ですが、付け加えられた赤が印象的です。

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※『ねずみじょうど』 瀬田貞二再話、丸木位里絵、福音館書店 1971年 (2021/12/28)

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