ふるはしかずおの絵本ブログ3

『 にげろ! にげろ? 』- 現代にいきる ジャータカ物語

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前回に続き、インドの昔話です。
『 にげろ にげろ? 』って、
いったい何から 逃げるのでしょうか。
ノウサギの 思い込みから、おおさわぎが はじまりました
      ・・・
神経質な ノウサギ。
世界がこわれたら、わたしは どうなるのだろう?
と心配していると、
ノウサギのうしろで、マンゴーの実が落ちました。
ノウサギは、後ろを確かめることもせずに、
せかいがこわれはじめた 」と 一目散に逃げだしました。
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別の ノウサギに会うと、
「 せかいが こわれはじめたの! あんたもにげないと! 」
「 えー、たいへんだ! 」
そのノウサギも 駆けだしました。
しまいには、1000匹の ノウサギが逃げだします。
     ・・・
つぎは、イノシシです。
イノシシも びっくり。
しまいには、1000頭の イノシシが逃げだしました。
シカ、
トラ、
サイも 逃げだします。
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1000匹の ノウサギ
1000頭の イノシシ
1000頭の シカ
1000頭の トラ
1000頭の サイ
が 林から広い草原へ逃げだしてきたとき、
そこに、1頭のライオンが いました。
ライオンは、落ち着いて 言います。
「 せかいが こわれるのを見たのは だれだ 」。
そして、ノウサギといっしょに 確かめに行きます。
    ・・・
ヤシの木とマンゴーの森で、ふたりが 見つけたものは?
マンゴーの実
それを確かめ、いそいで帰り、動物たちに言います。
「 せかいはなんともない・・・うちにかえりなさい 」。
みんなは、林に、森に、ぬまちに、ひくい木の生えているところに、ヤシの木とマンゴーの森に戻ります。
そして、心配性のノウサギは、ぐっすりと眠りました。
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この絵本は、インドの『 ジャータカ物語 』を元にしたものです。『 ジャータカ物語 』とは、前世において衆生をみちびく仏陀( 釈尊・釈迦 )のエピソードを集めたものですが、ここではライオンとなってあらわれています。ものごとに冷静に見つめ、みな(衆生)をただしく導いています。(『 ジャータカ物語 』は、日本では『 今昔物語 』や『 宇治拾遺物語 』などに影響を与えました。)
一方、マンゴーの落ちる音を「世界がこわれた」と思いこんだノウサギたちは、私たちの姿だと言えます。事実を確かめず、できごとを一方的に解釈し右往左往するノウサギと動物たち。ネット社会に生きるわたしたちによく似た人物です。
     ・・・
※『にげろ!にげろ?』 ジャン・ソーンヒル作 青山南訳 光村教育図書 2008年
【 追 記 】
ジャータカ物語については、岩波少年文庫に『 ジャータカ物語―インドの古いおはなし 』があります。  (2018/9/25)

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